ソフトバンク田中正義、本拠地初登板で生き残った

ソフトバンク対阪神 2番手で登板し2回を2安打無失点の投球を見せた田中はナインとタッチを交わす(撮影・栗木一考)

 ソフトバンク一昨年のドラフト1位、田中正義投手(23)が4日の阪神戦でプロ入り初の本拠地ヤフオクドーム登板を果たした。2番手で3四球を与えるなど課題も残したが、2回を2安打無失点投球。目標の開幕1軍入りの可能性を残した。ドラフトで5球団が競合した150キロ右腕は「自分の力をもっと出したい」と、出遅れた1年分の悔しさをぶつけていく。

 スタンドに詰めかけた3万7481人に圧倒されたわけではないだろうが、田中は初の本拠地マウンドで大胆さを失った。「マウンド自体は投げやすかった。無失点はたまたま。(投球が)後手に回った気がします。練習するしかない」。試合後、自らの投球を振り返って唇をかんだ。

 5回。先頭緒方を149キロの直球で左飛に打ち取った。あっさり1死を奪いながら、続く打者からは制球が定まらない。直球の球速も5キロ以上落ち、四球、中前打と連続して走者を出すと2死後に再び上本に四球を与えて満塁とした。マウンドに駆け寄った4歳下の捕手九鬼から「まっすぐで押しますか? どんどん腕を振ってきてください」と言われ、3番糸原に4球連続で直球を投げ込む。最後は147キロで中飛に仕留めた。続く6回も先頭から安打と四球で無死一、二塁のピンチを招いてようやくスイッチが入った。俊介、緒方をともに143キロの直球で空振り三振。坂本は141キロのストレートで二飛に仕留め、何とか予定の2回を投げ切った。

 「去年1年間(1軍で)投げられなかった。ようやく1軍で投げられたので、残っていかないと。開幕1軍に残してもらうために(自分は)面白いのではないかと思われるようにしたい」。一昨年のドラフトで5球団競合の末に入団。期待の大きさを感じ、応えられなかったからこそ、今年にかける思いは強い。

 昨年のこの時期、すでに右肩を痛めていた。入寮時に姉からプレゼントされた推理小説「シャーロックホームズ」のページも開くことがなくなっていた。昨オフから先輩和田に弟子入りし、雪辱を誓ってハードトレに励んだ。1年かかった本拠地初登板の収穫は「ケガをしなかったこと」とボソリと言った。

 「とにかく(開幕へ向け)自分の力を発揮できるようにしないと」。1年分の悔しさを次回登板にぶつけられるか。開幕切符は、その豪腕でもぎ取るしかない。【佐竹英治】

<首脳陣のコメント>

 ソフトバンク工藤監督(田中について)「マウンドに上がった1球目からしっかり出せるように。結果的に0に抑えたことは、自分で納得していいところ。経験も大事なので、投げさせていきながらね」

 ソフトバンク達川ヘッドコーチ(田中の投球に)「ようやくスタートラインに立った感じ。5球団が競合した片りんは見せつつある」

 ソフトバンク若田部投手コーチ(田中は)「探り探り投げている。100の力で投げてもらいたいんだが」

 ソフトバンク倉野投手統括コーチ(田中について)「もう1つ攻め切れていない。改善しないと、正直今のままでは残れないよという話はしています。何とかきっかけをつかんでほしい。持っているものはある」