雑草魂上原「もう引退とは言わない」巨人に全て捧ぐ

巨人の入団会見で背番号「11」を見せる上原(撮影・たえ見朱実)

 巨人に「雑草魂」が帰ってきた。米メジャーのカブスからフリーエージェント(FA)となっていた上原浩治投手(42)が9日、入団会見を行った。契約は1年で契約金1億円、年俸2億円(推定)プラス出来高払い。メジャー以外は引退する決意だったが、現役続行への情熱が勝った。他球団からもオファーを受けた中で古巣の熱意に10年ぶりの復帰を決断した。開幕1軍に照準を合わせ、早ければ20日の日本ハム戦(東京ドーム)で復帰登板を果たす。

 久々に愛着あるユニホームに袖を通した上原の思いは、プロ1年目と何ら変わらなかった。無数のフラッシュを浴び「20年前の写真を使ってよ」とカメラマンにおどけた。唯一、違うのは代名詞の「19」から「11」に変わった背番号。「決意というより、やることは1つだけ。一生懸命にがむしゃらにやる。それだけです。チームの1つの勝ち、優勝に向けて貢献できるように」。10年ぶりの古巣への帰還。雑草魂を胸に戦う決意は当時と同じだった。

 盟友との立ち位置は変わる。高橋監督とは生年月日も同じで現役時から絆は深い。契約合意が間近のころに「よろしくお願いします」と連絡し「期待しているよ」と言われた。「非の打ちどころのない素晴らしい青年」と評する高橋監督の下でプレーする不思議な感覚はまだ消えない。「監督と呼びます。敬語は…どうしよう。敬語ですよね」と苦笑いで指揮官を立てた。

 開幕まで残り3週間。すでに逆算して青写真を描いている。5日に帰国後、翌6日から日本球で投球を再開した。最初は武器のフォークが思うように落ちず「子供のころみたいに握って寝ないと」と感じたが、7日には制御し始めた。捕手を務めた関係者が「球がピュッと伸びてくる」と言うほど特徴的なホップする直球も投じている。

 今日10日からジャイアンツ球場で別メニュー調整を開始し、11日にはフリー打撃に登板する予定。2軍調整は10日間ほどで、鹿取GMは「状態を見てからになるけど、20日以降に1軍に合流できればという目安です」と説明した。ルーキー清宮が加わった20日の日本ハム戦での復帰登板が最短ルートとなりそうだ。

 巨人に帰ってきたことの意味は分かっている。高橋監督は「最後の力とは言わないが、彼のすべてをこの1年、出してくれればいいなと思います」と求めた。近年は引き際について発言することが多かった上原はシンプルだった。「もう引退とは言わない。それだけです」。何度踏まれても、そのたびに真っすぐ伸びてきた雑草右腕が巨人にすべてをささぐ。【広重竜太郎】

 ◆監督と同年齢または年上の選手 最近では14、15年山本昌(中日)や10年工藤(西武)がいる。兼任の谷繁監督が70年生まれに対し、山本昌は65年生まれ。工藤は63年生まれの47歳で、渡辺監督が65年生まれの45歳だった。巨人では1リーグ時代の49年中島以来となる。11年生まれの三原監督が38歳で、助監督兼外野手の中島は09年生まれの40歳でプレーした。