上原の対応力、投げづらいマウンドもスプリット活路

巨人対日本ハム 08年11月1日の西武との日本シリーズ以来となる東京ドームのマウンドへ向かう巨人上原(撮影・たえ見朱実)

 「雑草魂」が10年ぶりに東京ドームのマウンドに立った。巨人上原浩治投手(42=カブス)が20日、日本ハムとのオープン戦で日本復帰後初登板を果たした。日本仕様のマウンド、ボールへの対応に苦慮しながらも、7回1イニングを無失点。08年11月の西武との日本シリーズ第1戦以来、3426日ぶりのドーム凱旋(がいせん)登板には、06年の実数発表以降ではオープン戦史上最多の4万6297人が集まり、上原に大きな声援を送った。

 世界一経験者の上原でも、足がすくんだ。米国で代名詞となった登場曲「sandstorm」が球場に響くとオープン戦とは思えぬ大観衆がざわめいた。大型ビジョンには入団当時の映像と「Welcome Back(おかえりなさい)」の文字。「オープン戦なのにだいぶ緊張した。かなりの声援をいただいてうれしかった」。この時を10年間待ちわびたファンの心の声を360度から浴びながら、目の前の敵へ神経を研ぎ澄ませた。

 足もとを見つめ、経験の違いで抑えた。全22球中、スプリットが9球。「まっすぐが全部高めに抜けた。思ったところに球がいかなかった」と直球の制球に不満顔も、世界の強打者を震わせた宝刀でストライクを5個稼ぎ、有利に投球を進めた。1死から昨季パ・リーグ盗塁王の西川を四球で歩かせたが、素早いけん制でアウトのタイミングまで追いつめ、スタートを許さなかった。「打たれるよりゼロがいい。ほっとした部分が大きい」。胸をなで下ろした42歳を、チームメートがベンチでハイタッチで出迎え「みんなに『遅~っ!』と言われました」とコーチ陣や阿部らのいじりにも笑顔で応えた。

 短期間で日本仕様に歩幅を合わせた。10日の合流後、ジャイアンツ球場で3度フリー打撃に登板。「とにかくマウンドが軟らかくて左足が掘れる。フォームが固まらない」と硬い土の米国のマウンドとの違いに苦戦した。元々左足のふくらはぎに疲労がたまりやすく、メジャー移籍直後もフォームの変更に苦しんだ。「硬い土に合わせる時よりも違和感がある」と熟慮を重ね、左足の踏み出し幅を半歩広げることを決めた。「投げていけばマウンドの相性も良くなってくると思う。東京ドームのマウンドが投げづらいということをつかんだ」。完璧ではないが完成への光は見いだした。

 勝利の方程式入りの成熟へ、調整登板は23、25日の楽天戦。「(状態は)そんなことを言ってる場合じゃない。時間もないので」。4年ぶりのリーグ優勝への道は、背番号11が踏み固める。【桑原幹久】