楽天池田「絶対楽させたい」病明け両親へ捧ぐ初勝利

楽天対西武 プロ初勝利を挙げた楽天先発の池田(撮影・小沢裕)

 楽天2年目の池田隆英投手(23)が、1軍登板3試合目で両親にささぐプロ初勝利を挙げた。首位西武の強力打線に6回1/3で11安打を浴びながら5失点と粘った。創価高-創価大ではソフトバンク田中の2番手。プロ1年目は度重なる故障で2軍暮らしが続いた。ようやく1軍の舞台で輝き、過去に心臓バイパスの手術を受けてうつ病となった父英介さん(61)と、昨年胃がんの手術を受けた母幸子さん(57)に吉報を届けた。

 池田は初のヒーローインタビューで「ありがとうございます。う、うれしいです」と、少しかんだ。初々しさをにじませ、笑みをこぼした。ウイニングボールをどうするか? と聞かれると「両親です」と力強く答えた。地元・佐賀でテレビ観戦する大好きな両親を頭に浮かべていた。

 「お母さんが、去年がんになって」。昨年10月ごろ、母幸子さんに胃がんが見つかった。幸いにも早期発見だったが、昨年の終わりごろに受けた手術は6時間を超えた。池田は自主トレで米ロサンゼルスにいた。家族に手術の進捗(しんちょく)状況を聞き、無事に終了したと聞くとまぶたが熱くなった。「何でうちばかり。また? 何で? 勘弁してほしい」。

 無理もなかった。父英介さんは池田が小学校のころに心臓バイパスの手術を経験し、その後、うつ病となった。専業主婦だった幸子さんが家計を支えるため、新聞配達などのアルバイトを始めた。「うちは本当に貧乏でした。家族がそんな状態なのに、高校から東京に行かしてくれて申し訳なかった」と恩返しの気持ちを胸に上京した。

 ドラフト2位で指名を受けてプロの門をたたき、決意した。「絶対に楽をさせたい」。過去2度の登板は勝ち星に恵まれなかった。3度目のマウンドも楽ではなかった。強力西武打線を6回まで1失点に抑えたが、7回につかまった。連打と犠飛で失点すると、山川には1発を許した。「本当に勝つって本当に大変」と、次なるステップにスタミナ強化の課題も見えた。

 昨季は何度も1軍昇格のチャンスがありながら、度重なる故障で棒に振った。2年目につかんだ1勝目。テレビ観戦した幸子さんは「本当に良かったです。やっとです」と胸をなで下ろした。入団直後、両親へ新車1台をプレゼントした息子は「いつか、家族に大きな家を建ててあげたいんです」。まだ親孝行は始まったばかりだ。【栗田尚樹】

<池田隆英(いけだ・たかひで)アラカルト>

 ◆生まれ 1994年(平6)10月1日、佐賀・唐津市生まれ。幼少期には素潜りでサザエなどを採っていた。小4から成和ライオンズで野球を始める。唐津五中では東松ワンダーズで4季連続全国大会出場。東京・創価高では1年秋からベンチ入り。創価大では4年秋に東京新大学リーグの最多勝、最優秀防御率を獲得。180センチ、85キロ。右投げ右打ち。家族は両親と姉。血液型B。

 ◆趣味 ギター、ピアノ、料理。ギターは寮の部屋に置いてあり、暇な時に弾く。登板前には米歌手ブルーノ・マーズの曲を聴いてリラックスに努める。

 ◆座右の銘 「苦難は宝なり」。どんな困難なことも、自分の人生の糧となると信じる。「父のこと、母のこと、全てが意味があると思っています」。

 ◆好きな映画 「ライオン・キング」。ディズニー好きで「今、一番見たい映画はリメンバー・ミーですね。ホッコリしたい」。