巨人山口俊が古巣斬り、自己最多14Kに雄たけび

DeNA対巨人 9回裏DeNA2死一塁、中川大を空振り三振に仕留め雄たけびを上げる山口俊(撮影・滝沢徹郎)

 巨人山口俊投手(30)が1人旅を完成させた。打者34人を被安打5、2失点、自己最多の14奪三振の完投勝利で2勝目を挙げた。8連勝中と勢いに乗る古巣DeNAとの新潟決戦。尻上がりに調子を上げて、今季チーム完投一番乗りを果たした。ダイヤモンドの中心を占領した133球の快投劇。強気に攻め続けた“おとこ気投球”で最下位に沈むチームを鼓舞した。

 こん身の一振りがファイティングポーズだった。最少1点リードの9回。バットを担いだ山口俊が打席に入った。カウント1-1からの3球目。豪快なフルスイングであぜんとさせた。「気持ちを見せたかった。気持ちです」。2週続けての130球を超える熱投の疲労感を己の中だけに封じ込めた。試合開始から2時間38分後。至福の時間をかみしめながら「結構、いっぱいいっぱいでした。(完投は)最後まで投げるつもりで先発した。勝ててほっとしています」と言った。

 1人旅は事前に準備した“しおり”に沿って歩を進めた。当日のブルペンの状態が良好ではないと判断。「立ち上がりは慎重に入った。6回以降ぐらいからは自分のペースで投げられた」と、3回まで62球も我慢強く耐えた。2週続けての同じ顔合わせは、2プラトンで臨んだ。前回登板の外角中心の配球から一転、内角を強気にさし込んだ。「前回はインコースをあまり使っていない。今日はうまく投げ切れた。内角にいくだけじゃなくて、ストライクも取れたのが良かった」と6連続を含む自己最多の14奪三振をスコアシートに記した。

 気温12度のハードオフ新潟の気温に体が順応した4回以降は無安打投球で一気に駆け抜けた。「どんなに寒くてもアンダーシャツはノースリーブじゃないと投げられないんです」と、例外を許さない半袖姿がひときわ目を引く。イニングに比例して上がっていった体感気温とともにチームの機運も上昇させた。今季チーム完投一番乗りで、稼働が続くブルペン陣に今季初の連休を与えた。高橋監督も「スタミナあるし、最後の最後まで力強く腕を振っていた。ナイスピッチングだった」とたたえた。

 DeNA時代の15年5月9日にハードオフ新潟での巨人戦で当時の自己最多11奪三振をマークした。あと1人で完封勝利を逃し、延長戦でチームが敗れた過去がある。腰を下ろすベンチは一塁側から三塁側へと場所を移した。9回2死一塁。代打中川大をフォークで空振り三振に斬り捨て、雄たけびを上げた。「信頼してマウンドに行かせてくれた監督、コーチに感謝しています」と山口俊。頼もしい右腕が幸先よく週の始まりを告げた。【為田聡史】