中日松坂2敗目も収穫123球「1段階上がった」

7回表阪神2死満塁、松坂(手前)は代打上本を空振り三振に仕留め、ガッツポーズする(撮影・宮崎幸一)

 123球投げた! コーチ追い返した! 中日松坂大輔投手(37)が驚異の粘りを見せた。移籍後2度目の先発で、最長の7回を投げて4安打2失点(自責1)。初白星は逃したが、123球の熱投だった。4回無死満塁は1点でしのぎ、7回のピンチでは体調を心配して近づいた投手コーチを制して投げきり、追加点を防いだ。悔しい2敗目だが、闘争心むき出しの怪物が帰ってきた。

 松坂降板か? 球場がどよめいた。1-2の7回。1死一、二塁で大山を中飛に打ち取り、2死としたところで、朝倉投手コーチが出てきた。この回2度目。トレーナーを伴った「故障の疑い」のため、2度目でも投手交代せずに済むケースだが、中日ファンは「ああ~」とため息をついた。

 動きに気付いた松坂は両手を前に出し「大丈夫」。同コーチはすぐにきびすを返した。直前に、ベースカバーに走った際に足を気にするしぐさをしていた。森監督は「疲れて、つっているのかなと思った。でも返されたからね。追加点を取られていたら代えていた」と背景を明かした。

 「松坂劇場」のスイッチが入る。続く梅野の中前打で2死満塁。阪神は好投の小野に代えて代打上本を送った。中日ファンが大拍手を送り、息をのむ異様なムード。2-2から外角低めに逃げるスライダーで空振り三振。右手を強く握り、グラブをたたいた。

 松坂 自分のエラーで2点目を許してしまい、悔いが残る。流れを持ってこられなかった。チームの連敗を何とか止めたいと思っていた。長い回を投げて、勝つチャンスが生まれればよかったけど、それができなかった。

 そう言ったのは4回だった。先頭西岡の平凡なゴロを捕り損ね、大ピンチを招いた。福留に対し、カットボールを外角からストライクゾーンに入れる「バックドア」で芯をずらし、注文通りの遊ゴロ併殺。その間に1点を勝ち越されたが、傷口は最小限にとどめた。ただし、先発として十分すぎる仕事をしても、終わってみれば「悔い」になるイニングだった。

 中日は反撃できず5連敗。松坂も2敗目を喫した。「最低限は投げられた。120球投げたけどバテた感覚もなかったので、もう1段階上がったのかなと思う」。今日20日に予定通り出場選手登録を抹消される。次回は再登録が可能になる30日のDeNA戦(ナゴヤドーム)が有力。森監督は「よくしのいだ。ああいう展開でゲームを作ったのは経験がものを言った」と高く評価した。

 7回、続投を志願するとナゴヤドームは沸いた。98年夏の甲子園準決勝。明徳義塾戦で右腕のテーピングをはぎ取ってマウンドに向かい、大逆転劇につなげた名シーンを思い起こさせた。白星には惜しくも届かずとも、怪物復活への視界は大きく開けた。【柏原誠】