広島アドゥワ9戦0封 7回緊急登板無死満塁斬り

中日対広島 7回裏中日無死満塁、薮田(右)に代わりマウンドに向かうアドゥワ(撮影・前岡正明)

 広島が中日に敗れ、今季初の同一カード3連敗を喫した。その中で高卒2年目右腕、アドゥワ誠投手(19)の力投が光った。薮田が招いた7回無死満塁で緊急登板。大ピンチを無失点でしのぐと、8回も抑えた。これでデビュー戦から9試合連続、計10回2/3を無失点と「1人完封リレー」を達成。若武者の株が急上昇している。

 196センチの長身が、より大きく見えた。チームは開幕3連勝の相手に痛いしっぺ返しを食らったが、アドゥワの好投が今後への好材料だった。無死満塁からの酷な登場で踏ん張り、存在を大きく示した。

 「たまたまです。ランナーがいないと思って投げろと、周りからも言われていた。開き直れた。低めに投げたらゲッツーの確率も上がる。そこだけを意識した。今日は低めに投げられたと思う」。7回、薮田が3連続四球を与えた場面で3番手に指名された。ここで舞い上がることなく、脳内のイメージができていた。

 武器でもあるが、引っかかる癖があるカーブはこの場面は封印。今季から右打者にも投げ始めたチェンジアップと、ナチュラルに動く直球で勝負した。まず昨季新人王の京田を低めチェンジアップで空振り三振。そしてリーグ打率トップのアルモンテもタイミングを外し、二ゴロ併殺打に打ち取った。派手なガッツポーズもなく、息をついてゆっくりとベンチに戻った。8回も大当たり中のモヤのバットをへし折るなど3者凡退。2回を完全救援だった。

 スケールの大きさが魅力だ。ナイジェリア人の父は身長186センチで、母純子さんはかつてバレーボールのダイエーで活躍した同180センチのセンター。そんな両親を持つだけに小学生で180センチ、中学生で192センチもあった。「高いところに手が届くくらいですよ」と笑う。ここまで出番はビハインド限定だが、このまま好投を続ければ、さらに重要度が高い場面での起用にも手が届きそうな勢いだ。

 怒気を含んで薮田の降板を告げた緒方監督も、アドゥワについては「よう頑張ってくれた」と少し頬を緩めた。まだ2年目の19歳。ドラフト直後には「1、2年目は体を作って急がずに3、4年目に活躍できれば」と話したが、それを上回る成長曲線だ。いまだ防御率は0・00。「自信になる。いつか点を取られる時が来ると思うが、低めに投げることを徹底したい」。慢心することなく、アピールを続ける。【大池和幸】

 ◆アドゥワ誠(まこと)1998年(平10)10月2日、熊本市生まれ。出水南小1年の時に熊本中央リトルで野球を始め、出水中では熊本中央シニアに所属。松山聖陵では1年秋から登板。3年夏の愛媛大会では41回2/3を投げて防御率1・30と好投し、同校を初の甲子園出場に導いた。甲子園では準優勝した北海に初戦で惜敗。プロ1年目の昨季はファーム9試合で0勝2敗、防御率10・36。提供を受けるグラブなど用具ブランド名は自身と同じ名前の「誠」。196センチ、83キロ。右投げ右打ち。