広島会沢、連続死球ブチ切れ 6年前に山口俊と因縁

広島対巨人 3回裏広島1死一、三塁、2打席連続で死球を受けた会沢(右)が激高し、鈴木(中央)、マギー(左)らは止めに入る(撮影・たえ見朱実)

 戦う選手会長がナインを鼓舞した。広島会沢翼捕手(30)が12年8月に顔面に死球を受けた巨人山口俊からの2打席連続死球に激高。両軍がベンチから飛び出す一触即発のムードで球場の流れを変えると、1点を勝ち越した5回1死一塁からは左翼線へ適時二塁打を放ち、バットで巨人を突き放した。6-4で巨人の連勝を8で止め、5月白星発進だ。

 プツン-。いつも冷静な会沢が我を忘れマウンドに歩み寄った。3回1死一、三塁から山口俊の初球真っすぐが左肩付近を直撃。2回に続く、2打席連続死球に怒りを抑えられなかった。

 「戦っている以上(死球は)仕方がないと思いますけど、なめられてもいけない。カッとなりすぎたところは反省しないといけない。戦っている以上は闘志をむき出しにいかないと」

 3点を追う2回2死一塁でも山口俊の直球を左肩付近に受けた。痛みに歯を食いしばりながら感情をあらわにしたが、単なる2打席連続死球に怒ったのではない。伏線がある。会沢がまだ1軍定着を狙う立場にいた12年8月2日。当時DeNAの山口俊から顔面に死球を受け、鼻骨骨折。その後1軍復帰を果たせぬままシーズンを終えた。手術を受けた際に鼓膜まで響いた鼻骨を正す音は今でも「耳に残る」という。

 だからだろう。3回の場面は、気がついたらマウンドへ歩み寄っていた。その鬼気迫る雰囲気が波及した。2回は死球後に連続四球で得点。3回も2死後、田中の押し出し四球で勝ち越した。選手が一丸となった逆転劇だった。

 今季から選手会長を務める。水戸短大付時代は短ラン、ボンタンの学生服。入団会見には「目立ってナンボ」とあごひげを蓄えて臨んだ。プロ入り後も後輩を厳しく指導。昨オフ、選手会長の後任選びの際も石原や小窪前選手会長からの信頼を集め、ベテランの新井からも「責任感が強いし、みんなをまとめて引っ張っていく力もある」と太鼓判を押された。

 5回の3打席目に巨人を突き放す適時二塁打を放った。最後までマスクをかぶって8連勝だった巨人を止めた。「巨人があれだけの勢いで来ていたので、何とか止めようと思っていて、こういう形になって良かった」。試合後はいつものように冷静な口ぶりで勝利を喜んだ。【前原淳】