鳥谷、連続出場止まるも監督らに感謝「これが現実」

阪神対ソフトバンク 9回、ベンチで試合を見る鳥谷(撮影・清水貴仁)

<日本生命セ・パ交流戦:阪神0-1ソフトバンク>◇29日◇甲子園

 トリ、ついにストップ! 阪神鳥谷敬内野手(36)が「日本生命セ・パ交流戦」開幕戦のソフトバンク戦(甲子園)を欠場し、入団1年目の04年から15年がかりで続けてきた歴代2位の連続試合出場が、1939でストップした。今季は不振で控えが多く、代打や守備固めで記録をつないできたが、金本監督が苦渋の決断。チームの連勝も5で止まったこの日、金本阪神が大きな節目を迎えた。

 出番はなかった。鳥谷は一塁側ベンチで静かに用具をしまった。覚悟を決めていた男だけが見せる、落ち着いた表情だった。プロ野球歴代2位の連続試合出場数が1939でストップ。試合後は穏やな面持ちで感謝の言葉を並べた。

 「いつかは止まるものなので。いい時も悪い時も、ケガをしても使い続けてくれた監督たちに感謝したいです」

 葛藤の2カ月間だった。オープン戦打率0割6分7厘。シーズン開幕直後、記録の終わりを誰よりも早く覚悟したのが本人だった。

 「開幕2戦目で先発を外れた時、自分の中で、もう連続試合出場は終わったんだと考えた。ケガとか疲れとか、そういう理由がなくスタメンで出られなくなったということだから」

 開幕戦で1安打した翌日、スタメンを外れた。開幕4戦目の敵地DeNA戦で適時二塁打を決めた翌日も、同戦でベンチスタート。「これが現実だから…」。横浜スタジアムを後にする際、夜空を見上げてそっと事実を受け止めた。

 試合を重ねても状態は上がらない。出場機会は激減していく。「自分から、記録を止めてください、と言いに行った方がいいのかな…」。何度、思い悩んだことだろう。それでも最後までポリシーを貫いた。「出る、出ないは、選手が決めることじゃない」。妥協のない準備だけを自らに課し続けた。記録のために出続けるな-。批判の声は全身で受け止めた。この日も最後までベンチ裏でバットを振った。後悔は、ない。

 甲子園ナイターゲーム前の日課は午前中のランニング。誰もいない甲子園。1人黙々と外野フェンス沿いを走り続け、最近あらためて実感することがある。

 「昨日あれだけ散らばっていた客席のゴミが朝にはなくなっている。いつも誰かが掃除してくれている。陰で支えてくれる人たちがいて、自分はグラウンドに立ててるんだなって」-。

 現状、打率1割4分3厘。打席に入れば、今も大歓声が降り注ぐ。「普通だったらブーイングのはず。本当にありがたいよ…」と照れくさそうに笑う。

 腰椎骨折、右手人さし指爪の裂傷、肋骨(ろっこつ)骨折、そして鼻骨骨折…。想像を絶する苦境との戦い、元広島・衣笠祥雄氏が誇る2215試合連続出場を追う旅は終わりを告げた。次は目の前から続く、感謝を体現するための道のりを歩む。【佐井陽介】