育成出身巨人メルセデスが初勝利、ボールは母に

ヤクルト対巨人 1回裏ヤクルト2死一塁、バレンティン(手前)を二塁ゴロに仕留めるメルセデス(撮影・浅見桂子)

<ヤクルト3-6巨人>◇10日◇神宮

 巨人に燃費抜群の“育成車”が誕生した。9日に育成から支配下登録された巨人クリストファー・クリソストモ・メルセデス投手(24=ドミニカ共和国)が来日初登板初先発。188センチ左腕は最速を147キロに抑えて5回5安打無失点で勝利投手となり、チームを2位に導いた。育成出身の初登板初先発初勝利はプロ野球史上初。年俸2万ドル(当時約230万円)から2シーズンで日本式装備を積んだ外国製ボディーで、後半戦へ名門のエンジンをフルスロットルにする。

 夢のような瞬間だった。メルセデスはウイニングボールを手に高橋監督とまばゆいフラッシュを浴びた。「とてもハッピーな気持ち。ボールは母に渡したい」。母国ドミニカ共和国にいる母ノルマさんへ感謝し、表情が和らいだ。プロ野球史上初の育成出身の初登板初先発初勝利の偉業を成し遂げ、白い歯がこぼれた。

 繊細に攻めた。188センチの長身から長い腕を振った。「コースをついて、四球を出さないように」と来日から磨いた低めへの制球力で、最速147キロの直球を両端へ集めた。130キロ台前半のカットボールで右打者の内角をえぐり、120キロ台中盤のスライダーを決め球にした。5回2死二塁も、西浦をスライダー1球で遊ゴロに。「ピンチは形にこだわらず、アウトを目指した」。5回5安打無四球で、燕打線をゼロに封じた。

 ハングリーに牙をといだ。昨年1月に来日。同い年の妻カロリーナさんと昨年誕生した息子クリストファーJrくんを母国に残した。気分転換は同じ寮生で6月に支配下登録されたアダメス、育成のマルティネスとの食事。「マクドナルドではハンバーガー(100円)、サイゼリヤではチキンステーキ(499円)を食べるよ」。育成の肩書が取れ、年俸2万ドルから5万ドル(約550万円)に。「妻と息子によりよい生活をさせるために頑張る」と一家の大黒柱としても役割を果たした。

 未来が開けた。外国人枠の兼ね合いもあるが、高橋監督は今後へ「投げると思うよ」と後半戦のローテ入りの可能性も十分とした。チームは近年、若手の育成に尽力。岡本らに加え、中米での発掘テストを経て、育成で獲得した外国人も台頭し「(2軍で)結果を残してきた選手が1軍でも結果を残すとチームとしても大きい」と手応えをつかんでいる。「もっと練習して長い回を投げたい」と貪欲な助っ人左腕の存在が、浮上のきっかけになる。【桑原幹久】

 ◆クリストファー・クリソストモ・メルセデス 1994年3月8日、ドミニカ共和国生まれ。12年から15年までレイズ傘下のマイナー球団でプレー。17年1月に巨人と育成契約。今季は2軍で先発3試合を含む6試合に登板し、防御率2・05。9日に支配下登録された。背番号95。契約金、年俸ともに5万ドル(約550万円)。188センチ、82キロ。左投げ左打ち。