松坂、江川卓、ゴジラ…/野球人が抱く怪物像に迫る

06年、オールスター第1戦の西武松坂

<平成ラスト球宴(上)>

 平成最後のオールスターに「平成の怪物」こと松坂が出場した。横浜高では甲子園春夏連覇。西武で日本一、日本代表でWBC優勝、メジャーではワールドシリーズ制覇と数々の栄光を手にした。「怪物」には「得体の知れない不気味な生き物。ばけもの」の他に「理解しがたいほどの不思議な力をもっている人や物。また、とび抜けた実力や強い影響力・支配力をもつ人物」(三省堂・大辞林)という意味がある。今、野球人が抱く「怪物」に迫った。【プロ野球取材班】

<怪物とは、松坂大輔である。>

 「高校時代から注目され、プロでも第一線。ケガしても戻ってこられた。ファンの方も見たい」(楽天今江)。

 「そのまま、怪物」(ソフトバンク甲斐)と文句なしに挙がる。

 98年夏の甲子園のPL学園戦では延長17回、250球で完投した。

 当時7歳だった西武の後輩にあたる浅村も「すごいという印象しかない」。

 松坂世代の阪神藤川も「そりゃあ、みんなが言うように、あいつでしょ。“怪物”が似合うのは大輔しかいない」と即答。

 さらに、オリックス・アルバースも「日米で素晴らしい成績を残した選手。話を聞いてみたいね」。

 ファンだけではない。国境を超え、野球人にとっても松坂は怪物なのだ。

<怪物とは、江川卓である。>

 「子どもの頃、江川さんは本当にインパクトがあった」(日本ハム栗山監督)。

 「プロに入って対戦したけど、俺の時は(力を)抜いていたよ」(ヤクルト小川監督)。

 「平成の」を外せば、やはりこの人だ。

<怪物とは、怪獣ゴジラである。>

 「子供の頃、よく映画を見ました。いろんな攻撃をする。しっぽや口からはいたり」(西武外崎)。

 「テレビ画面からでも、街が小さく見えるぐらいでかい。迫力が伝わる」(巨人岡本)。

 「やっぱり人じゃないでしょ(笑い)。ゴジラに勝る怪物とは出会ってないです」(ヤクルト山田哲)。

 さすが、日本が誇るゴジラ。野球人の口調も熱い。でかい。強い。それが怪物だ。

 「恐竜ですね。映画のジュラシックパークも好き」(ソフトバンク松田)。

 「夢の中で追いかけられて怖かった。ゴジラみたいな怪物」(中日平田)。

 「対戦ゲームのゴモラ。何回やっても倒せない」(中日藤嶋)。

 ちなみにキューバ出身の中日ガルシアは「キングコング」だった。

<怪物とは、野球界の先輩である。>

 「ゴジラの異名を持つ松井(秀喜)さんも怪物だと思う」(巨人岡本)に異論はないだろう。考えてみれば、プロ野球界は常人には不可能なことをやってのける人たちの集まり。怪物だらけだ。特に先輩のことは、そう思えて当然。

 「清原さん。小学生の時、東京ドームで初めて生で見たら、でかかった」(西武山川)。

 ヤクルト宮本ヘッドコーチも「清原さん。真剣に野球を見始めてから強烈な印象が残りすぎている」。怪物に憧れ、迷わずPL学園に進んだ。

 まだまだいる。「松井稼頭央さん。格好良いから」(楽天岸)。

 「プロ入りして、村田修一さんを見た時のことは今でも忘れられない。こんな世界で自分が通用するんかな? て思いましたもん」(DeNA筒香)。

 「川上憲伸さん。エースの風格があった。後ろで守っていても、安心感がありました」(中日荒木)。

<怪物とは、対戦相手である。>

 「田中将大。高校で対戦して、こういうのがすごいやつなんだと思わされた」(巨人坂本勇)。

 「広島の丸さん。この前2本もホームランを打たれて。どこに投げても打たれそうで…」(阪神岩貞)。

 「ダルビッシュ、マー君(田中将大)、大谷(翔平)だね。1人、選ぶならダルビッシュ。メジャーに行く前の年は、あれは打てないって思った」(阪神平野打撃コーチ)。

 「(巨人)吉川光夫ですね。ボーイズリーグでよく対戦したけど、打てる気が全くしなかった。中学生で140キロくらい出てたんじゃないかな」(DeNA宮崎)。

 「高校で対戦した関西高は怪物でした。日本ハムにいたダース・ローマシュ匡やヤクルトの上田剛史。岡山県内最強でしたね」(中日亀沢)。

 じかに相対したからこそ、びしびし“すごみ”が伝わってくる。

<怪物とは、同僚や後輩そして家族である。>

 「(大谷)翔平。すごく速い球を投げてすごく打球も飛ばして、意味が分からない(笑い)」(日本ハム上沢)。

 「大谷ですね。投げても打っても何じゃこらってね。誰が見てもすごい。同じアスリートから見てもすごい」(オリックス増井)。

 「(西武)森友哉です。中学3年の夏に代表合宿で初めて会った。小柄なのにパワー、スイングスピードがすごすぎた」(DeNA東)。

 「おやじでしょ。昔は、ばり怖かったですもん。顔を合わせたくなかった。どんな投手よりも怖かったですね」(ヤクルト中村)。

 身近だから分かる怪物っぷりがある。

<怪物とは、???である。>

 「悪霊です! (前投手コーチの落合)英二さんが霊感強くて『お前が一番悪霊がついてる』って言われて。自分では何も感じないですけど、僕はそのせいでケガしてたと思ってます」(ロッテ内)。

 今年は、元気です。もう、たたられませんように…。

<怪物とは、観念である。>

 「目に見えないものではなく、目に見えるもの。イメージの中のものではなく、実在するものだと思う。遠くに飛ばす意味では(ソフトバンク)柳田さん、筒香。速いボールでいえば大谷」。(巨人菅野)。

 「速い球を投げる、遠くに飛ばせる人が怪物。誰とかはない。生まれ持ったものもあるし、そういう努力をしているということもある」(巨人上原)。

 「僕は体力がなかったので、半面というか、自分にできないことをやっている人たちは怪物ですね。金本監督、(広島)新井、黒田(博樹)。底なしの体力を持っている」(阪神高橋2軍投手コーチ)。

 それぞれの野球人が、それぞれの怪物を心に抱き、プレーする。ファンは、こよいも怪物に酔いしれる。