巨人老川オーナー「力が及ばず」不祥事引責で辞任

一連の不祥事の責任をとり、老川オーナーの辞任をはじめとした球団幹部の処分を発表し謝罪する巨人石井社長(撮影・野上伸悟)

 巨人は17日、相次ぐ不祥事の責任を取り、老川祥一取締役オーナー(76)の辞任を発表した。6月以降、選手が飲食店で裸となり、携帯電話で撮影するなどの行為や、野球用具の窃盗・売却などトラブルが発覚。球団の信用を大きく失墜させる事態となったことの責任を明確にするため。石井一夫球団社長や鹿取義隆GM・編成本部長らが報酬を自主返納するなど、球団幹部らも管理・監督責任を問われ、処分が下された。後任のオーナーは近日中にも発表されるという。

 老川オーナーは2年4カ月で同職から去った。野球賭博問題で辞任した白石前オーナーの後を継ぎ、16年3月に任に就いた。だが再び、不祥事が続発する異常事態。球団トップとして責任を取ることとなった。

 会見に出席しなかった老川オーナーは「球団内で不祥事が続いたことは誠に残念です。紀律委員会で不祥事の再発防止の具体策を検討するなど、手を尽くしてきたつもりでしたが、力が及びませんでした」とコメントを発表。石井球団社長は「野球賭博事件後、不祥事の再発防止を誓ったが、今回、再び相次いで起こる事態を引き起こしてしまった。老川も自らの責任を痛感し、組織のたがを締めきれなかったことを痛切に感じている」と説明した。

 3つの不祥事が絡んだ。6月11日に飲食店で篠原が裸になり、河野が携帯電話で撮影し、SNSで自身のフォロワーに限定公開。今季は無期限の出場停止処分が下された。今月7日には、柿沢貴裕容疑者が生活費に困窮し、同僚の野球用具を盗み、売却して収入を得たとして契約解除。翌8日に窃盗容疑で逮捕された。

 さらに先週、一部週刊誌から元トレーナーによる、わいせつ疑惑が報じられた。外部から業務委託で派遣され、直接の雇用関係はない。それでも石井社長は「不祥事は今回、3件と考えています」と受け止めた。

 今後の対策として、私生活の悩みを相談できる窓口の設置を決定。担当スカウトらが若手選手の相談相手となるメンター(助言者)制度の導入も検討している。それでも選手個々が自覚し、球団も真摯(しんし)に選手と向き合わなければ、意味を成さない。

 老川オーナーは「私が自らの身を処することによって選手、球団職員が一体となって紀律を引き締め、再発防止にしっかり取り組んでいってもらいたいと思います」との言葉で締めくくった。新オーナーについて石井社長は「なるべく早く、明日にでも決めて発表したい」と話した。名門の信頼回復は容易ではない。

 ◆老川祥一(おいかわ・しょういち)1941年(昭16)10月25日生まれ、東京都出身。早大政治経済学部卒。64年、読売新聞社入社。政治部長、編集局長、大阪本社代表取締役社長、グループ本社取締役編集担当、東京本社代表取締役社長・編集主幹などを経て、2011年からグループ本社取締役最高顧問。14年12月から同最高顧問・主筆代理・国際担当(ジャパン・ニューズ主筆)。16年3月に巨人オーナーに就任。

<巨人オーナー近年の辞任>(肩書きと年齢は当時)

 ◆渡辺恒雄氏 04年8月13日、渡辺恒雄オーナー(78=読売新聞グループ本社会長)が、電撃辞任した。都内のホテルで読売新聞東京本社・滝鼻卓雄社長(65)が緊急会見。04年秋ドラフトで自由獲得枠での入団が確実視されていた一場靖弘投手(明大4年)に対し、前年12月から7月上旬までに約200万円を渡していたことを公表。日本学生野球憲章に抵触する違反行為を重くみた同グループはこの日、読売巨人軍の臨時株主総会、取締役会を開き土井誠球団社長(61)、三山秀昭球団代表(57)らフロント首脳4人の解任を決定した。後任オーナーには滝鼻氏が就任した。

 ◆白石興二郎氏 16年3月8日、東京・大手町の読売新聞東京本社で緊急会見を開き、高木京介投手(26)が野球賭博に関与していたと発表した。この問題の責任を取り、渡辺恒雄球団最高顧問(89)白石興二郎オーナー(69)桃井恒和球団会長(69)が辞任した。巨人は15年11月に所属3投手が無期失格処分となったばかりだった。球界を挙げて再発防止策を講じてきたが、4人目の発覚で信用をさらに失墜させる不祥事となった。