巨人マルティネス「カンペキ」阿部バットでV弾1号

巨人対中日 2回裏巨人1死、初打席初本塁打を放つマルティネス(撮影・河野匠)

<巨人5-0中日>◇27日◇東京ドーム

 巨人の「育成のきら星」が、デビューを華々しく飾った。27日に育成選手から支配下登録選手契約を結んだホルヘ・マルティネス内野手(25)が即日「7番二塁」でスタメン出場し、初打席で初本塁打を放った。2回1死、中日山井から右中間席最前段へ先制ソロをマーク。育成出身選手の初打席初本塁打は11年阪神森田、17年広島バティスタに続き史上3人目で、球団では史上初。ドミニカ共和国出身で前日まで育成選手が、チームの6連敗を止めるサプライズな活躍を見せた。

 誰もが目を丸くした。2回1死。マルティネスはフルカウントの7球目、山井の127キロフォークに反応した。外角高めの見逃せばボールの高さだが「高い球を狙っていた」と迷わなかった。支配下登録即スタメンの初打席。名刺代わりの1発を右中間席最前部へ放り込み、仲間を総立ちさせた。「サイコウ! カンペキ! キモチイイ!」と流ちょうな日本語と笑顔が止まらなかった。

 ベテランの思いも詰まっていた。グリップ下部に「10」が刻印された阿部のバットを手に打席へ立った。「去年もらったものを2軍でも使っていた。ホームランを打ったバットは今日もらったもの。もちろん明日もこのバットを使うよ」。来日1年目の昨年、ジャイアンツ球場で阿部から指導を受けた。ティーを体の近くに置き、センター方向に打つ練習で内角の打ち方を学んだ。教えとは逆コースの球だったが、恩返しのひと振りでベンチに座る“師匠”を喜ばせた。

 もうひとつの教えも実った。13歳から出身が同じ町のメジャーリーガー、ロビンソン・カノの父が経営する野球アカデミーに入団。ヤンキース、マリナーズで活躍し、アメリカンドリームをつかんだ「憧れの選手」を生んだ地で、野球人生の土台を築いた。カノ本人とも毎年オフに自主トレを行い、直接指導も受けた。「まじめに練習し続けることの大切さを学んだよ」。愚直に信じた道を歩み、日本で花開いた。

 新星のサプライズな1発に高橋監督も「山口俊の話もあるが、今日はマルティネスが全体の空気を変えてくれた」と目を細めた。同じく育成から支配下登録された同郷のアダメス、メルセデスに続き、チャンスをつかんだドミニカンは「ホームランボールはドミニカ(共和国)に帰った時に家族に渡したい」とほほえんだ。心優しい「育成のきら星」が、チームを上昇気流に乗せる。【桑原幹久】

 ▼マルティネスが来日初打席で本塁打。初打席本塁打は17年10月3日細川(DeNA)以来62人目。巨人では13年ロペス以来8人目で、Vアーチとなったのは08年にサヨナラ弾を打った加治前以来3人目だ。またマルティネスは育成選手から支配下登録されたばかり。育成選手上がりの初打席本塁打は、11年森田(阪神=支配下→育成→支配下)17年バティスタ(広島)に次いで3人目。