西武中村が王手弾「打てなかったらボロクソ言って」

楽天対西武 4回表西武1死一塁、塩見から左越えに6試合連続本塁打を放つ中村(撮影・野上伸悟)

<楽天3-7西武>◇10日◇楽天生命パーク

 新旧4番が今季5度目、通算10度目の本塁打そろい踏みだ。西武は0-2の4回、今季4番に座る山川穂高内野手(26)が30号ソロを放ち、反撃開始。1死一塁から、昨季まで4番だった中村剛也内野手(34)が18号2ランを放ち、逆転した。中村はパ・リーグ記録に並ぶ6試合連続本塁打を達成。打線全体でも13安打7得点の猛攻で、最下位楽天にパワーを見せつけた。貯金を今季最多タイの21に戻し、敗れた2位日本ハムとは5ゲーム差。10年ぶりの優勝が、くっきり見えてきた。

 行方は追わなくてよかった。1-2の4回1死一塁、中村の打球は、きれいな放物線で左翼スタンドへ。楽天塩見に2球で追い込まれたが、3球目のインハイ134キロを完璧に捉えた。「いろんな球をケアしながらのカウント。うまいこと打てました」と自画自賛。18号2ランで逆転に成功した。同時に、パ・リーグ記録に並ぶ6試合連続本塁打を達成。が、「特別、何もないと言えば、何もないです」と意に介さなかった。

 記録に名を刻んでも淡々。理由は明快だ。「記録は気にしないですねえ。気にして打てるなら、気にしますけど」と、いたずらっぽく答えた。だから、7試合連続なら、あの王に並ぶと言われても「意識しません。まだ並んでないし。並んだら答えます。打てなかったら、ぼろくそ言ってください」と冗談で返した。周りが騒ごうが、騒ぐまいが、関係ない。打撃に集中するだけ。昨季まで4番を張り、本塁打王6度の矜持(きょうじ)にも見えた。

 中村の露払いは、今季4番の山川が務めた。4回先頭、塩見の初球カーブを「やられていた球」と狙い打ち。同じく完璧に捉え、ライナーで左越えへ30号。節目到達も「打てるだけ、打ちまくりたい」と通過点だ。昨季後半にブレークし、23本塁打を残したが「去年の数字は参考外」と強調する。シーズンフルで何本打てるか。心に秘す目標も「言いません。公言するのは、来年から。まずは1年やってみて。じゃないと、自分の基準が分からない」。軽々に数字を挙げたくはない。現4番の矜持だった。

 オープン戦は打率1割台と絶不調だったが、開幕前、中村に構えのズレを指摘され復調した。「中村さんは、えげつない。6試合連続なんて」と尊敬の念を抱く。中村は「個人的には、他の人が打つ、打たないはどうでもいい」と正直だ。それでも、助言を送った。

 中村 あいつはオープン戦でも4番を打って、これからやっていかないといけない選手。だから、言うようにしています。一緒の長距離砲だし、期待されているんでね。

 山川 4番を守れるように。結果を出し続ければ、4番でいられる。

 新旧4番は打撃で会話する。強力打線の系譜が紡がれる先、10年ぶりの優勝が待っている。【古川真弥】

 ▼中村が4日日本ハム戦から6試合連続本塁打。連続本塁打のプロ野球記録は72年王(巨人)86年バース(阪神)の7試合で、6試合以上続けたのは15人目。パ・リーグで6試合連続は04年松中(ダイエー)以来9人目のタイ記録となり、西武ではクラウン時代の78年土井、03年カブレラに次いで3人目。この日は逆転2ランで、中村はすべて走者を置いての1発。走者を置いた場面で6戦連発は04年松中に次いで2人目だ。74年に41歳のアルトマン(ロッテ)が6戦連発したが、日本人選手では中村の34歳11カ月が78年土井の34歳5カ月を抜き最年長記録に。なお、今日先発予定の岸には通算15打数3本塁打。前回対戦の7月21日には2本塁打している。

 ▼山川が両リーグ30号一番乗り。西武選手の両リーグ30号一番乗りは53~55年中西、83年テリー、87、91年秋山、01年カブレラ、09、11、15年中村に次いで6人目。山川は4月28日の10号、7月1日の20号も両リーグ最速。10、20、30号と続けて両リーグ一番乗りは12年バレンティン(ヤクルト)以来で日本人選手では97年松井(巨人)以来、21年ぶり。