広島鈴木誠也M点灯弾「シンプル」打法を自画自賛

阪神対広島 3回表広島1死二塁、鈴木は左越え2点本塁打を放つ(撮影・加藤哉)

<阪神4-6広島>◇15日◇京セラドーム大阪

 首位広島が阪神に快勝し、ついに優勝へのマジックナンバー「32」が点灯した。お預けが続いたマジック点灯チャンスに7度目でようやく成功。3回には若き4番、鈴木誠也外野手(23)の22号2ランで流れを引き寄せた。チームは60勝にリーグ一番乗り。過去5度の最速60勝はいずれもリーグ制覇しており、データ上はV率100%。球団初の3連覇へ視界良好だ。

 鈴木が豪快な一撃で、3連覇への道筋を示した。3回、丸の先制打の直後。1死二塁で放った高い弾道は、京セラドーム大阪の左翼3階席に着弾。大歓声を浴び、涼しい顔でベース1周。ナインとハイタッチを交わし、笑みがこぼれた。リードを保って逃げ切り、ついに優勝マジックが点灯した。

 若き主砲は序盤の2ランに「遠い昔のような感じ」と第一声で笑わせた。主導権を握ったことには「丸さんが苦しい場面で走者をかえしてくれて、楽な気持ちで打席に入れた」と納得顔で振り返った。8月は13試合で早くも8発。自己最多だった16年8、9月の月間7発を更新した。月間打率も4割6分と高い。昨年は8月下旬に右足首骨折で無念の離脱も、今年は夏男ぶりを発揮。苦しい台所事情の投手陣を助けている。

 阪神才木からのアーチについては、珍しく自画自賛した。「うまく打つことができた。真っすぐが強い投手。真っすぐに合わせていた。どのコースを打ったかも覚えていないくらい。よく引っかかってくれた」。カウント3-1から外角の厳しいスライダーにタイミングを外された。体が泳いでも、軸はぶれなかった。その裏には、シンプルな打撃理論がある。

 「真っすぐ立って、真っすぐバットを出す」-。求道者のように試行錯誤を繰り返すが、常にチェックするのはトップの位置だ。

 「トップは強くバットを振り出すための場所なので。疲れてくると、左肩が内側に入ってくる。それを戻そうとすると、反動で(きわどい球に)バットが止まらなくなる。反動をつけた方が飛距離は出ますけどね。真っすぐ構えて打つ。シンプルが一番。だけど難しいんです」。楽に飛ばしたい気持ちを抑え、肩のラインを一定に保ちながら、あらゆる球に対処。そんな技術が難しい変化球の柵越えにつながった。

 昨年より1試合早い101試合目でマジックが点灯した。点灯について緒方監督は「関係ないこと。143試合、カープの野球をやるだけ」と普段通りを貫いた。鈴木も「32ですか? まだいいかな。気にせずにやっていきたい」。2位以下に大差をつけ、ゴールテープがはっきり見えてきた。【大池和幸】