巨人岡本待望のセ界制覇弾 練習、道具替え鬼門突破

ヤクルト対巨人 3回表巨人2死二塁、岡本は左越え2点本塁打を放つ(撮影・足立雅史)

<ヤクルト5-11巨人>◇15日◇神宮

 巨人の4番岡本和真内野手(22)が3回2死二塁、左越え22号2ランを放ち、前日3位に転落したチームを、一夜で2位に再浮上させた。セ・リーグ本拠地球場で唯一本塁打のなかった神宮で、プロ4年目にして初の1発だった。ただ、試合の流れを引き寄せるアーチを放つ一方で、6回の第3打席で遊ゴロを機にベンチに退いた。

 思い切りスピンをかけて、呪縛を断ち切った。2点リードの3回2死二塁。岡本は、ヤクルト古野の甘く浮いたカットボールを見逃さなかった。下っ面からしばき上げた打球に左翼手バレンティンは1歩も動かない。セ・リーグ本拠地で唯一ノーアーチだった神宮球場で、左翼席中段へと飛び込む完璧な2ラン。「追加点が欲しいチャンスの場面で積極的に打ちにいったことが、いい結果につながった」と振り返った。

 鬼門を突破するため、切れ味を磨いた。試合前の午前中にジャイアンツ球場の室内練習場で自主練習を行った。用いたのはボールをぶら下げる「スピンティー」と呼ばれるティースタンド。通常はボールを置いてティー打撃を行うが、ボールの下をたたいてバックスピンをかける感覚をつかむ。薄暗いブルペンの一角で電気もつけず、ひたすらバットの軌道を確認。約15分無心で振り込み、「スイングが丁寧にできているか確認できた。集中して、試せました」と汗をぬぐった。

 闇に打ち勝つ道具も効いた。7月31日のDeNA戦からバットの色を黒から白にした。違いを「白は黒よりも、ぼんやりとした感じ」と表現。夜空に同化しない白はミートする感覚を増大させた。これまで黒色にこだわってきたが、ナイターの多い屋外球場での得点圏打率が下がっていると感じ、視覚を変えた。

 前夜14日は一時4点差をひっくり返すも、9回にサヨナラ負け。敵地に残る、底なし沼へと引きずり込まれそうな空気を一振りで吹き飛ばした。6回の打席で遊ゴロを放ち、一塁に全力疾走した後、裏の守備で交代。試合途中でベンチを離れたが、試合後は「大丈夫っす、大丈夫っす」と笑顔で繰り返し、帰宅した。今季全108試合に先発出場中の若き主砲。終盤戦へ一抹の不安を残したが、岡本なしでは今の打線は形成できない。唯一無二の存在感で勝利への道を切り開く。【島根純】