巨人マギー、サヨナラ打 金足農の諦めない姿に感銘

9回裏巨人1死一、三塁、サヨナラ打を放ちポーズを決めるマギー(撮影・たえ見朱実)

<巨人6-5中日>◇19日◇東京ドーム

 巨人が「ミレニアムV」のサヨナラ劇を再現した。本拠地での中日戦は9回まで1-5の完敗ムード。最後の攻撃でルーキーコンビの大城、田中俊の適時打などで追いつき、最後はマギーが5連続適時打となる左前打で劇的に今季2度目のサヨナラ勝ちを収めた。最終回4点ビハインドからのサヨナラ劇は、長嶋茂雄監督(当時)が監督生活最後の優勝を決めた00年9月24日の中日戦以来。18年ぶりに起こした「奇跡」を勢いに変換する。

 高橋監督が率いてきた中でも極上の結末だった。就任3年目で通算14度目のサヨナラ劇も最終回に4点差をひっくり返したことはない。18年前の「ミレニアムV」以来。当時サヨナラ弾を放った二岡打撃コーチは「古いの出してきたね。覚えてるけど、覚えてない」と記憶の片隅を突かれ、笑った。間違いなく同じなのは、誰もサジを投げなかったこと。指揮官は「決めたのはマギーだけど、そこまで諦めずによくつないだ」と、たたえる連打だった。

 劇的な空気感は薄かった。先発今村が7回13安打2失点も、8回に3点を失った。だが最後にドラマが待っていた。先頭の阿部が死球で出塁。1死後、山本も粘って歩いた。代打陽が「阿部さんが出て雰囲気が変わった」と右中間適時二塁打。長野が食らいつき、適時内野安打で2点差とした。

 ベテランのお膳立てをルーキーが継いだ。代打大城が「後ろにつなぐ気持ちで」と右翼線へ適時二塁打で1点差。「勇気づけられた」と田中俊はたたきつけて右前に運び、ついに同点とした。最後に決めたのは甲子園大会にはまり、金足農・吉田輝星の投球に心打たれたマギー。三遊間を射抜き、劇的に決めた。「感銘を受けるのは、球児たちの全力で諦めない姿。秋田の学校も知らないが、ああいう子が出ると学校に興味を持つ。そのくらいすごい」と日本の伝統を体現した。

 変えられない伝統がある。今夏は猛暑で甲子園も屋外開催の是非を問われた。自身も球児で出場した高橋監督の思いはシンプルだった。「この暑さが大変なことは間違いない。でも場所を変えるのはね。甲子園はそれだけ積み重ねてきた場所だから」と論じた。

 名門として、数々の奇跡の1ページをしるしてきた。この日、起こした伝統の奇跡を勢いに変えられるか。「普通に勝てるのが一番いいが、チームに勢いがつく。はずみにしたい」。シーズンの最終章に向けて転換の1勝とする。【広重竜太郎】

 ▼巨人が9回裏に5点を挙げてサヨナラ勝ち。最終回の一気逆転サヨナラの最大差は93年6月5日近鉄がダイエー戦で記録した6点差(2-8→9-8)だが、巨人の4点差逆転サヨナラは46年7月28日パシフィック戦(2-6→7-6)00年9月24日中日戦(0-4→5-4)に次いで3度目の球団タイ記録だ。00年は巨人がM1で迎えた試合で、9回裏1死から6番江藤の満塁本塁打で追い付き、続く7番二岡がサヨナラ本塁打を放って優勝を決めた。今回のように本塁打なしで4点差逆転は、3安打、1四球と相手の2失策でひっくり返した46年パシフィック戦以来だった。