DeNA東、権藤以来の巨人戦3戦3勝で新人王爆走

力投するDeNAの東(撮影・江口和貴)

<DeNA6-0巨人>◇23日◇横浜

まだまだ沈まない。DeNAドラフト1位の東克樹投手(22)が本拠地での巨人戦に先発、7回無失点の好投で8勝目を挙げ、巨人戦初登板から3戦3勝とした。中5日の影響をみじんも感じさせない力で押し込む投球。Aクラス入りへ落とせない相手に、カード勝ち越しを運んだ。リーグ新人王をほぼ手中としている安定感で投手陣の軸となり、チームを3年連続のポストシーズンへと導く。

3度目の対決も根負けしなかった。東の目には仕留める軌道が見えていた。6回2死一塁で打席は阿部。カウント1-2と追い込んでから3球ファウルで粘られたが、勝負球を絶妙のコースに押し込んだ。外角中心の配球から一転、内角への145キロ。「イメージ通りの球を投げられて、三振を取れてよかった」。この日対峙(たいじ)した3打席で計19球を投じ、全て空振り三振。巨人ファンだった少年時代、テレビ越しに声援を送った男に仕事をさせなかった。

全力で腕を振った。5月9日広島戦以来、今季2度目の中5日。「正直『中5日はこんなに大変なんだな』と感じた。1人1人に全力を出し切って、こういう結果につながったと思う」。最速149キロの直球に、チェンジアップ、スライダーを駆使。クリーンアップに許したヒットは、岡本の内野安打だけに封じた。

7勝目を挙げた7月20日から1カ月以上、白星から遠ざかった。「自分の中ではすごく長かった」と明かしたが下は向かなかった。「落ち込むよりも発見があった」。8月10日の阪神戦。7回3失点で黒星を喫したが、下半身にしっかり体重を乗せる感覚を思い起こせた。「右足のつま先を真っすぐベース板に向けること。悪いときは、耐えきれずに右へ逃げてしまう」。

身長170センチの左足に、76キロの体重を乗せ、弓を引くように右足を踏み込む。小さな体から爆発的なエネルギーを生み出すために、心掛けていたポイントだった。右内転筋の筋力トレーニングは欠かさず、チューブで鍛える地道な練習を反復。努力が左腕をよみがえらせた。

新人の巨人戦初登板から3戦3勝は61年権藤(中日)以来、57年ぶり。「勝ったら並ぶことは知ってました。うれしいです」と素直に喜んだ。新人王の筆頭候補となったが「まだ早い。目標の2ケタ勝利に向かって目の前の試合に取り組んで、チームの勝利に貢献したい」と引き締めた。

疲れを閉じ込めての116球。チームに7月24~26日中日戦以来のカード勝ち越しを呼び込んだ。「バテて点を取られるようではダメ。(7回まで)代わりたくなかった」。チーム勝ち頭の8勝目。実績ある先発陣が苦しくても東がいる。終盤の巻き返しはDeNAの十八番。巻き返しへ、これ以上ない勢いをもたらした。【佐竹実】

▼ルーキー東が今季8勝目を挙げ、巨人戦は4月12日、同19日に次いで3戦3勝。新人で巨人戦に初登板から3戦3勝は61年権藤(中日)以来、57年ぶり。1リーグ時代には36年松浦(名古屋)39年村松(名古屋)47年中谷(南海)が1年目に巨人戦で3戦3勝したが、2リーグ制後は権藤と東の2人だけだ。東の巨人戦失点は4月12日の初回、マギーに打たれた3ランによる3点だけ。その後は18回2/3連続無失点と抑えている。1リーグ時代の3人と権藤は3戦3勝止まりだが、東は次も勝てるか。