完全目前もノーノー巨人杉内、マー君と投げ合い語る

杉内は内海から花束を贈られ涙をみせる(撮影・足立雅史)

伝統の「18」を脱ぎ、ワイルドに走り出す。巨人杉内俊哉投手(37)が12日、都内ホテルで会見を行い、今季限りでの現役引退を表明した。ダイエー(現ソフトバンク)と巨人で通算142勝(77敗)をマークした左腕。ノーヒットノーランを達成した12年5月30日の楽天戦で、9回2死フルカウントから四球を与えて完全試合を逃したが「あれはボールです」。完全燃焼の17年間を振り返った。

鮮明に残る記憶に曇りはない。壇上の杉内は迷いなく即答した。巨人移籍1年目、12年5月30日楽天戦。現ヤンキース田中との投げ合いだった。9回2死まで完全試合ペースで圧倒した。あと1人。フルカウントからの6球目は、内角低めの直球で決めにいった。良川球審の手は挙がらず、平成2人目の完全試合を寸前で逃した。

コース、高さともにいっぱいにも見える1球だったが、見立ては違った。「ボールですね。中島にはよく打たれていた。僕が逃げたんでしょうね。審判が良川さんの試合ってすごく淡々と進むし、接戦が多かった。外が広かったのは投げていて分かっていたので」と穏やかに認めた。

審判の判定を尊重し、18・44メートルの少し先までを枠に収め、キレで圧倒してきた。ただ堀内恒夫、桑田真澄と受け継がれた巨人のエースナンバーは本当に重く、見えない圧と闘い続けた。「本来ならば、18番をつけたらもっと成績を残さないといけないのかもしれない。今思うと、やっぱり重かったのかなと思う。でもこの7年間、あの18番のユニホームを着られたのは、すごく幸せだった」。感謝とともに肩の荷を下ろした。

当面の目標を問われ「バイクの免許を取りたい。大型バイクに乗ってね。どこに行こうかな。伊豆とか行きたいよね」。12年の契約更改後の会見で、お笑い芸人スギちゃんの衣装に身を包んだ過去もある。マウンドの雄々しさと普段のシャイさに隠れがちだが、豊かな人間味も魅力だった“杉ちゃん”。大型バイクにまたがり、さっそうと海岸線を走り抜けるぜぇ~ワイルドだろぉ…そんな夢を描いている。【為田聡史】

◆2012年5月30日の巨人-楽天(東京ドーム) 巨人杉内と楽天田中の投手戦で試合は進んだ。0-0の7回、巨人は高橋由の2ランで先制。杉内は1人の走者も出さないまま9回2死まで到達した。しかし、代打中島を1-2と追い込みながらフルカウントとすると、6球目に投げた内角低めの138キロ直球はボール。四球で完全試合を逃した。それでも次打者の聖沢を見逃し三振に仕留めノーヒットノーランを達成。試合は2-0で巨人が勝利した。