松坂「僕は頑張る」引退した戦友の分まで決意の6勝

阪神対中日 雄たけびをあげる松坂(撮影・上田博志)

<阪神2-6中日>◇13日◇甲子園

甲子園で負けられない。38歳の誕生日を迎えた中日松坂大輔投手が、阪神を5回1失点に封じ6勝目を挙げた。西武時代の06年以来となる、聖地の公式戦マウンド。横浜高時代に春夏連覇した「平成の怪物」の威厳を示した。松坂世代の仲間が相次いで現役引退を表明した中でのマウンド。「やめていく選手の分まで」と思いを込めた力投で、マリナーズ岩隈久志と並び日米170勝に到達した。

「序盤から飛ばして、いけるところまでいこう」。38歳になった松坂は「平成の怪物」を拝命した甲子園で原点回帰した。腹をくくり、20年前のように荒々しく、阪神を押し切ろうと決めた。

2回の打席で、マンモススタンド全体からバースデーの拍手をもらい「聞こえてました。ありがたかった」。表情を変えず勝負に徹した。右打者の外角。左打者の内角。豊かにボールを動かし、相手が嫌がるポイントに集めた。2死になるたび力を振り絞り、なりふり構わずイニング完了を目指し、積み上げていった。

雨にぬれた黒土は「投げづらかった。20年前の投げやすさはなかった」。硬いマウンドでもまれて変わった感覚が、歳月を感じさせた。「左足がつっかかって。転べばよかった」と足元が揺らいだ直後、4回2死二塁。伊藤隼の腰を引かせたインローのシュートに、バットを動かすことを許さない鬼気を込めた。5回2死二、三塁、大山にはアウトローの根比べを挑んだ。7球目のスライダーを振らせると、珍しくほえた。

98年夏の決勝でノーヒットノーランを達成した聖地。同じ年に生まれた阪神先発の才木に、勝利への執着の差を見せつけた。どうしても勝ちたかった。

「プロになってからはそんなに投げていないが、僕にとっては特別な球場。最近、同世代…後藤、村田、杉内が引退を発表した。彼らの分も気持ちを込めて投げた。『僕はもう少し頑張る』という決意表明のマウンドにしたいと思っていた。いいピッチング、いいボールも見せられたと思う」

横浜高で一緒だったG後藤。甲子園で対戦し投手をあきらめさせ、スラッガーとなった村田。左の代表格として、一緒に「松坂世代」をけん引してきた杉内は「テレビで見る」と言ってくれた。志半ばで、立て続けにユニホームを脱ぐ決断をした仲間の引退。目いっぱいの95球には思った以上の力が宿り「甲子園という球場が、力をくれたのかな」と感謝した。

20年前の誕生日は、高校日本代表として甲子園でアジアAAA選手権の決勝を投げ抜いた。「内容は程遠いけど。ここにきて球のスピードも出てきている。チームとしても、まだあきらめていないゲーム差。最後までCSにつなげられるように」。日米通算170勝の大台に到達し、チームも最下位を脱出。戦友たちの思いを背負った凱旋(がいせん)は幕を閉じた。【伊東大介】