西武に熱男~!山田遥楓プロ1号、難聴ハンディ何の

西武対日本ハム 4回裏西武2死二塁、山田は左中間にプロ初ヒットとなる2点本塁打を放ち、スタンドに向かって「熱男~!」と叫ぶ(撮影・丹羽敏通)

<西武12-4日本ハム>◇19日◇メットライフドーム

若き山賊現る! 西武の4年目、山田遥楓(はるか)内野手(21)が本拠地での日本ハム戦に「8番三塁」でプロ初スタメン。4-1の4回2死二塁で、左中間席へプロ初安打となる2ランを放り込んだ。生まれつき右耳が難聴というハンディを感じさせない、底抜けの明るさと元気が魅力。西武のスタメンにふさわしい豪快な1発を全員が祝福した。チームは今季3度目の6連勝。優勝マジックを1つ減らし「9」とした。

たけだけしく振り抜いた。4-1の4回2死二塁、1ボールから山田に迷いはなかった。日本ハム堀の外寄り138キロ。「初球がチェンジアップ。直球1本」。左中間へ打球がすっ飛んだ瞬間、三塁側ベンチから選手たちが一斉に飛び出した。当の本人は「実感なくて。二塁回ってファンの反応で分かりました」と無我夢中で帰還した。

山賊たちは出迎えもたけだけしかった。辻監督と両手でハイタッチ。先輩が次々と飛び込んで祝福してくれた。源田は抱きつかんばかり。リーグ規定はベンチから出ないよう定めるが、突き抜けた。山田は左翼のファンへ向かって、まさかの「熱男~~!」。オフの自主トレをともにするソフトバンク松田宣の決めぜりふまでやってのけた。

底抜けに明るい。初1軍の今春キャンプでは、同じ三塁を守る中村のミスにもヤジで盛り上げた。「スタイルです。元気を出した方が体も動く」。裏には苦労を忍ばせる。生まれつき、右耳が難聴。「理解されない人には『無視してる』と思われたこともありました。フライは方向が分からない時がある。外野手の口の動きで判断してます」。

ハンディなんかに負けない。佐賀工の恩師・吉丸信氏(63=現北陵監督)は「野球小僧。僕の倫理の授業では寝てましたけどね」と懐かしんだ。高3夏の大会を前に4部練習を3週間、課した。明けた月曜日。「今日は絶対休め」と厳命していた。所用で主将の山田の携帯に電話すると、風の音が聞こえた。「グラウンドで朝練してたんです」。プロ入り3年あまりで体重70キロから14キロ増量。野球小僧が一本気に食べて振って、10年ぶりの歓喜へ進撃する山賊の仲間に加わった。

辻監督は「うれしいね。初ヒットがホームラン。最高」とわがことのように喜んだ。先輩たちは「緊張するだろうけど、頑張れ」と声をかけてくれた。リストバンドは森がくれた。みんなに愛されている。山田は「夢みたい。でも、まだまだ。少しでも出られるように」。本当のプロ生活はここからだ。【古川真弥】

◆山田遥楓(やまだ・はるか)1996年(平8)9月30日、佐賀県生まれ。佐賀工では遊撃手兼投手。3年夏に佐賀大会決勝で佐賀北に延長10回2-3で敗れ、甲子園出場なし。14年ドラフト5位で西武入団。4年目の今季は6月16日中日戦に代打で1軍初出場。今季2軍成績は87試合、296打数78安打(打率2割6分4厘)、8本塁打、34打点。179センチ、84キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸550万円。