同期西武栗山&中村 今の選手「後輩力」高い/対談

試合終了後、握手する西武栗山(左)と中村(撮影・鈴木正人)

西武が誇る17年目コンビの対談が実現した。中村剛也内野手(35)と栗山巧外野手(35)は01年ドラフトの同期入団。前回優勝した08年は、ともに売り出し中の若手として活躍し、それぞれ初タイトルも獲得した。今や頼れるベテランとなった2人が、この10年を、今季を、お互いを、そして、これからを語り合った。【取材・構成=佐竹実、古川真弥】

08年は主に2番栗山、6番中村。2人とも、10年前との違いを痛感している。

栗山(以下、栗) あん時は25歳のぺーぺー。今、出始めの若い子は勢いがある。当時のベテランの方々も俺らのこと、こういう気持ちで見てたんやろうな。

中村(以下、中) 「怖さ、知らんなあ」と思って見てたんやろうなあ。江藤さん(現巨人3軍監督)とか。俺ら、ばんばん、ミスしたもんな。思いっきり、バット振ったし。

栗 俺なんか2番で4打席、計4球で終わったことある。全部初球打ちで、全部セカンドゴロ。必死すぎて「何が悪いんかな」と思ってた。(今季2番の)源田は、やらんもんな。

中 大人やな。今、出てる選手は。

栗 ほんま“後輩力”高いしな。先輩をフォローしてくれる(笑い)。

中 俺らはゼロ。先輩方にカバーしてもらってた(笑い)。

勢いで突っ走った08年。ただ、再び優勝するのに10年もかかるとは…。

中 優勝できそうな時もあったけどな。

栗 2010年。12年もそう。10年もかかるとは思ってなかったな。おかわりの気持ちが分かった。

中 何?

栗 お前、白髪多いやろ。なのに全然、染めない。ずぼらなだけや、思ってた。そしたら、この10年で俺もどんどん増えてる。最初は染めてたけど、きりないな。なんでお前が染めないか分かった。

中 ずぼらもあるけどな。どんどん多くなる。きりない。何の話(笑い)!?

栗 いや、10年の時間の話や(笑い)。

優勝を逃す間、チームを去った仲間も少なくない。

栗 大人の事情もあるからなあ。

中 しょうがないっちゃ、しょうがない。

栗 でも、寂しかったな。毎年、今のメンバーで来年もやれると思っても、やれへんもんな。

中 誰かが、いない。

栗 そう。結局、タイミング。優勝は全部そろわないと、できへん。そういう意味で、今年はすごい。ありえへん勝ち方もあった。

中 ありえへん負け方もしたしな。毎年、優勝したいけどな。何でもタイミングが大事。

栗 辻監督も就任の時、言ってた。「人生、タイミングだ」て。座右の銘らしい。

中 俺も、それにしよ(笑い)。

息ピッタリ? の2人だが、実際はどうなのか。

栗 周りが思うほどペラペラしゃべらない。かといって、周りが勘ぐるほど険悪なムードになったこともない。うまいことドラフトしたよね。性格の違うヤツらを。俺らは交わることがない。衝突もしない。言うたら“水と油”やね。

中 合わないっちゃ、合わないかも知れない。

栗 どこまで行っても平行線。だって、お前は右投げ右打ち。俺は右投げ左打ち。打撃観から違う。それに、お前は太ってる。

中 それ、17年間、ずっと言ってるな。

栗 担当スカウトが同じだったから、入団会見は一緒に新幹線で上京した。そしたら、お前が富士山側に座ってて、突然「チラリラリ~」て。当時は、まだカメラ付きの携帯は珍しかった。「撮るヤツ、おるんや。こいつ、おもろい」て思ったなあ(笑い)。

中 せっかく、カメラ付き持ってるし。富士山見えて、こら、撮らなあかんて。この話も10何年間、ずっと言いよるな。年1回ぐらい(笑い)。

打者としては、お互いをどう見ているのか。

栗 ホームランを打とうと思えば思うほど、おかわりはすごいと思う。ここ2、3年、俺もフリーバッティングで遠くに飛ばそうとやってるけど、お前は野球を始めて20年以上、ずっとそれをやってきた。

中 クリは、やってこなかったのに、やればできる。クリの練習を見て、俺も「すげー」て思ってる。

栗 最近すごいからな。

中 まあまあやろ。もうちょっと早く、やっとけば良かったんちゃう? そしたら、もうちょっとホームラン打てた。

栗 400本は打ってたな!

中 ウソやな。

前半戦、栗山は出番が限られ、中村は絶不調だった。

栗 6月か。お前の代打。「中村に代わりまして栗山」。あれは、しんどかった。俺も1打席でも立ちたかったけど、お前が1本でも打てば代打はない。ちゃんとせいや、思ったな。

中 悔しい気持ちはあったけど、あんなバッティングじゃな。サード守っててベンチをチラッと見たら、そわそわ。「俺、交代やな。右ピッチャーくるし」て感じるぐらい弱ってたな。

栗 7月からはバカ打ちしたやん。1シーズンで2シーズンやったな。良いシーズンと悪いシーズンと。

中 6月の後半は7試合連続ベンチ。代打もない。お茶飲みながら見るだけ。あしたのジョーみたいに燃え尽きてたな。

栗 白髪ぼーぼーやし。

中 ほんま、増えたわ。勢いの08年と比べ、今年は充実感というか、いろいろあった1年で優勝できた。

栗 充実感で言えば、俺は08年かな。ミスもいっぱいしたけど、充実してた記憶しかない。今年は若手に引っ張ってもらって、9月に緊張感のある試合ができた。充実よりは感謝かな。

優勝の受け止め方が違う2人は、やはり水と油? ただ、あと4年、21年目まで一緒なら、同期入団かつ同学年で、入団した球団に最も長く在籍したコンビのプロ野球最長記録(※)となる。5連覇に挑戦する?

栗 すごいな。でも、20歳の子供じゃない。その難しさは分かってる。

中 本当にそう。「5連覇、行きましょかあ」とは言われへん。

栗・中 4年は長いなあ~(と、ため息)。

最後は意見が一致した。が、まだまだ元気な2人。4年後もガンガン打っているに違いない。

※:最長は巨人槙原寛己と村田真一(82~01年)、ロッテ福浦和也と小野晋吾(94~13年)の20年。

◆最近10年の西武のFA移籍 ソフトバンクに移籍した細川(10年)と帆足(11年)大リーグのアスレチックスに移籍した中島(12年)巨人に移籍した片岡とロッテに移籍した涌井(ともに13年)楽天に移籍した岸(16年)ら計10人がFA権を行使して移籍した。一方で自前の選手を育てる方針から、獲得したのは、広島からFAとなり16年春のキャンプにテスト生から加入した木村だけ。