菅野CS初ノーノー、山口俊に守護神の極意求め実践

ヤクルト対巨人 ノーヒットノーランを達成し、捕手の小林と抱き合って喜ぶ巨人菅野(撮影・たえ見朱実)

<セCSファーストステージ:ヤクルト0-4巨人>◇第2戦◇14日◇神宮

巨人菅野智之投手(29)が、セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦でノーヒットノーランを達成した。7回2死からヤクルト山田哲に四球を与えた以外は走者を許さなかった。CSや日本シリーズなどポストシーズンで、1人で投げ切っての無安打無得点試合は史上初。2連勝で3年ぶりにCSファイナルステージに進んだ巨人は、17日から広島と日本シリーズ進出を争う。

一瞬の静寂の後、菅野は両腕を突き上げた。9回2死、28人目の坂口への113球目は外角高めの直球。打球は中堅方向に飛んだ。クルリと振り返る。落下点に入る陽岱鋼を確認。両手を広げた。「最高の気分。実感はないけど、歓声を聞いてすごいことをしてしまったんだな」。達成感がこみ上げた。

中4日の強行軍も平然と受け入れ、マウンドに立った。この日は速球を140キロ台前半にとどめ、スライダーを軸にイニングを重ねた。バレンティンら主軸には140キロ台後半の速球で押し込んだ。「6回くらいから意識した。矛盾しますけど早く1本出てほしかった。0点に抑えていたけど、どこか苦しい投球でした」。偉業達成までの道中は険しい道だった。

単なる中4日ではない。前回登板は勝てばCS進出が決定するシーズン最終戦の9日阪神戦。その試合も中4日で、かつ自身プロ入り2度目の救援登板を担った。先発では百戦錬磨も、リリーフ経験は皆無に等しい。試合中盤でスタンバイ。今季無安打無得点を達成し、守護神に回った山口俊に助言を求めた。アドバイスに従い、先発時とは異なる準備を実践。1日限定の“守護神”であっても勝つために何ができるのかの最善策を求めた。完璧主義を貫く執念が、大記録達成の一助になった。

リーダーとして周囲にも勝利へのこだわりを求める。6月のオリックス戦の試合前だった。京セラドームのバックヤードで2年目の谷岡へ強い口調で問い掛けた。「優勝する気でやってるか?」。1軍にいるだけでは意味がない。「同じベクトルで戦うことが大事。チームとしての喜びを共有しないと」。チームの先頭に立って鼓舞し続けた。

一世一代の快投でファイナルステージに導いた。「おそらく人生で初めて」と記憶にないノーヒットノーランで勢いをつけて、3位からの日本一へ突き進む。17日からはV3王者広島と敵地で対する。「僕たちは挑戦者。高橋監督と1日でも長く野球ができるように、最後までフル回転で頑張りたい」。広島に屈するつもりは毛頭ない。日本シリーズを制するため、必ず東京ドームに舞い戻る。【桑原幹久】