阪神矢野新監督「来年優勝」目指すは星野さん03年

監督就任会見を終え、ガッツポーズで笑顔を見せる阪神矢野新監督(撮影・上山淳一)

阪神矢野燿大新監督(49)が18日、大阪市内のホテルで就任会見に臨み、「来年優勝を狙う」と1年目での14年ぶりリーグ制覇を誓った。捕手出身だが目指すは攻撃型野球。理想は自らも正捕手で優勝に貢献し、「みんながヒーローになった」03年型のチームだ。3年契約で背番号は88を継続。また、出演したラジオ番組で、辞任した金本知憲前監督(50)が「背中を押してくれた」ことが受諾の決定打になった秘話を明かした。

心のスキは1ミリもない。お披露目会見の終了間際、矢野新監督の眼光がキッと鋭くなった。長期での育成重視か、勝利追求か。来季の戦いを問われたときだ。

「もちろん、もちろん勝負やん。勝負に行くよ。3年後に優勝なんてみじんも思っていない。来年、優勝をもちろん狙うし、ファンを喜ばせるのに3位でいいことはない。そんな、のんきなことは思っていない」

来年は1年目だが、“猶予”に甘えない。続投が既定路線だった金本前監督が11日に辞任を表明し、15日に就任要請を受諾したばかり。だが今季の1軍は、17年ぶりの最下位に終わり、再建への覚悟がにじんだ。

「俺は、やっぱり理想は点を取りたい。それがファンも喜ぶ。甲子園で点を取っているときの、あの流れが一気にできたときの雰囲気をファンは求めている。守りの緊迫した部分は捕手としてはいいんだけどね」

2度ゴールデングラブ賞に輝いた司令塔で「守り」のイメージもあるが、意外にも攻撃型野球を掲げた。阪神では2度のリーグ優勝に貢献。理想も明かした。

「03年が俺の中での理想。みんながヒーローになって、逆転もあって。コイツら何するんやろ、どんな試合すんねんとか…。03年はそういうのが多かった。俺も理想は点を取って勝ちたい。一番いいなと思う」

18年ぶりにリーグ制覇した03年のような形で頂点を狙う。日替わりヒーロー、実に42試合の逆転勝ち…。星野監督は中日時代の97年にトレードで放出された時の指揮官だった。巡り巡って、阪神で再び監督と選手の間柄となり、必死に定位置を守った。いつしか認めてくれた恩師は1月に急逝。天国に向け「覚悟を決めました。精いっぱいやってきます」と伝えたという。

前任の金本監督と再建を目指したが志半ばだ。「本当にいろんな思いがある。胸の内に秘めて戦っていくのが僕は一番いい」。意志を継ぎつつ、自らのカラーも出す。「僕には僕にしかできないものもある」。

今季は2軍監督として<1>超積極的<2>あきらめない<3>誰かを喜ばせる、をスローガンに掲げ、選手の自主性を引き出してファームを日本一に輝いた。「(1軍は)歯車がうまくいかなくて勝てない年になったけど、チームとして後退しているとは思わない。みんなが力を出したら、全然、優勝は可能。僕は前に向いたプレーが好き。タイガースファンの人も消極的なプレーや引いたプレーは見たくないと思います」。屈辱の最下位から、前のめりで栄光を目指す。【酒井俊作】

◆03年の阪神 前年就任し4年連続最下位だったチームを4位に押し上げた星野監督は、FAで獲得した金本をはじめ、伊良部、下柳、ウィリアムスら戦力を補強。金本、桧山、アリアスら主軸打者を、この年首位打者を獲得した今岡や盗塁王の赤星、矢野らが脇を固め、切れ目のない打線で得点を重ねた。投手陣もこの年20勝のエース井川を中心に伊良部、ムーアら先発に、ウィリアムスや安藤らのリリーフ陣も盤石。4月18日に首位に立つと独走態勢を作り、7月8日に76試合目で球団最速の優勝マジック49を点灯させた。9月15日のデーゲーム広島戦にサヨナラ勝ちするとその夜にヤクルトが敗れ、18年ぶりリーグ優勝が決まった。日本シリーズは3勝4敗でダイエーに敗れたが、11月に大阪・御堂筋と神戸・三宮で優勝パレードを実施。合計65万人に祝福された。