侍稲葉監督「打つ方は一級品」清宮ら若手抜てき示唆

インタビューで笑顔を見せる侍ジャパン稲葉監督(撮影・江口和貴)

日本ハム清宮幸太郎内野手(19)が、来春侍ジャパンデビューする可能性が高まった。野球日本代表の稲葉篤紀監督(46)がインタビューに応じ、来年3月9、10日にメキシコ代表と対戦する「ENEOS 侍ジャパンシリーズ2019」(京セラドーム大阪)は若手主体で臨む考えを示した。東京オリンピック(五輪)の金メダル獲得へ、新戦力を試す最後の機会と位置付ける2試合。清宮、オリックス吉田正、山本らフレッシュ侍の抜てきを示唆した。【取材・構成=前田祐輔、広重竜太郎】

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勝負の東京五輪が約1年7カ月後に迫った。来年11月には世界野球ランキング上位12カ国による「プレミア12」が開催される。来秋はベストメンバーを編成する見通しで、メキシコ戦が事実上、最後のテストになる。

「本当に試せるのは、もう来年の3月しかないと思ってます。今後のジャパンを見据えながら、いろいろ選手を試してみたい。若い選手になると思います」

メキシコ戦はDeNA筒香、ソフトバンク柳田、西武秋山ら常連組の招集は見送る可能性が高い。代表経験者もソフトバンク甲斐、巨人岡本ら若手主体になる見通し。トップチームの経験がないヤング侍を中心に選考を進めている。

今季7本塁打を放った清宮もリストアップする。選出すれば、中南米系投手が操る「動くボール」への対応力も見極められる。ただ稲葉監督はシーズン中からチェックを続け、その能力を高く買っている。

「打つ方はある程度、1軍でやっていけば慣れてくる。打つ方に関しては一級品というか、素晴らしいものを持っている。そういう選手(清宮)も含めて考えていかないといけないでしょうね。『これから』ということも考えながらやるという意味ではね。若い選手は、いっぱい、いい選手がいますので」

複数ポジションを守れる選手を重視している。「あとは守り。どこを守るかというところでしょうね」と加えることも忘れなかった。現在、侍ジャパンの一塁手は西武山川が中心。左翼の練習を積む清宮が代表に定着するには、守備力も課題になる。清宮だけではなく、代表経験のない同じ左のスラッガーにも着目している。強烈なフルスイングで打率3割2分1厘、26本塁打をマークしたオリックス吉田正だ。

「彼も非常によく打ってましたし、魅力のある打者の1人。割って入れるだけのものは持っている。しっかりと見ていきたいと思います」。稲葉ジャパンの外野陣は筒香、柳田、秋山が中心で、メンバー争いはハイレベルになる。

若手投手の中では、今季32ホールドのオリックス2年目右腕の名前を挙げた。

「山本投手は非常に素晴らしいピッチングをしていた。強いストレートを投げてました。ああいうボールがどこまで通用するか見てみたいなと思います」

監督自身は今季、10月にコロンビアで開催されたU23ワールドカップ(W杯)でも指揮を執った。炊飯ジャー2台を持ち込み、米は現地で調達。コーチ陣は通常より2人少ない、五輪と同じ3人体制を体感した。

「監督として、U23を含めて全部で20試合経験できたことは、非常に大きな経験になったと思います。大きな成果を得られたかなという1年でした。自分でサインを出して作戦も考えて。トップチームはヘッドコーチもいる中で判断できますが、相談して決められない。やるべきことは非常に多かったです」

監督経験を積んで臨んだ11月の日米野球は、5勝1敗と勝ち越し。今後の指針になり得る、勝利に徹した采配があった。

第1戦の2点を追う9回2死二塁。4打数3三振だった4番山川に、代打会沢を送った。中前適時打で1点差に迫り、柳田のサヨナラ弾を呼び込んだ。初戦の勝利をきっかけに勢いに乗り、好成績につなげた。

「山川選手の代打に会沢選手を出したところですね。ジャパンの4番に代打は非常に迷いましたが、ジャパンというチームは勝ちにこだわる。そういう采配もしなくてはいけないと、あらためて分かりました」

来年は五輪予選を兼ねるパンアメリカン(ペルー)や韓国、台湾への視察も行う予定。筒香、秋山、広島菊池涼らが将来的なメジャー挑戦を公言し、大リーガーの参加が難しい五輪に向けチームの底上げは不可欠。清宮ら若手のテストは極めて大きな意味を持つ。

五輪本番までの課題は。

「私自身でしょうね。選手の能力はある程度分かってきた。私自身の采配を含めて、選手たちが最大のパフォーマンスを発揮し、勝ちにつなげられるように、しっかりやっていくことが一番大事だと思います」