ロッテ藤原「非の打ちどころがない」/和田一浩分析

ロッテ藤原の打撃フォーム(14日、中日との練習試合で田島から右へ適時二塁打=撮影・滝沢徹郎)

選手のプレーを連続写真で分析する好評企画「解体新書」。今回はロッテのドラフト1位、藤原恭大外野手(18=大阪桐蔭)を和田一浩氏(46=日刊スポーツ評論家)が解説。そのスイングには、超高校級と評されてプロ入りした理由が随所に表れていた。

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高校生を見て、これほど完璧に近いスイングをする選手は、お目にかかれない。これまで何人もの打者を「解体新書」で評論させてもらったが、記憶にある中では一番、非の打ちどころがない打者と言っていい。さすが、高卒の外野手でドラフト1位の評価を受けるだけの逸材だ。

自然体で構えている(1)から、(2)では右足を上げ、バットのヘッドを投手側に入れている。比較的、足を高く上げるタイプだが、軸足の左足に安定感がある。バランス感覚に優れているのだろう。(3)までに、左膝が外側に向くようにして投手側に腰をスライドさせている。

このように下半身の体重移動をする時、体をひねり過ぎて、グリップの位置が背中側に入り過ぎる打者がいるが、ちょうどいい形で収まっている。背中側に入り過ぎる打者は、インパクトまでに余計な距離ができてしまい、速い直球に差し込まれやすい。この位置からだと左ひじを体の前に移行しやすくなり、速球にも対応できる。

右足を踏み出しにいく(4)では、グリップの位置が若干、上がっている。これが「割り」と言われる動作。個人的な好みから言うと、もう少しだけグリップの動きが大きい方がいいが、問題ないレベル。「強い打球を打つ」と「変化球に対応するための間」につながる「割り」は、好打者になるための必修動作。この動きができているから、(5)以降の動きで、変化球にも対応できる打ち方につながっている。

(5)では腰が投手側にスライドしすぎているが、これはスライダーに対応しているからだろう。そのため、少しスタンスが広くなり、やや泳いでいる。これが直球を打つタイミングだったら、頭の位置に対し、少し腰がスライドしすぎているが、変化球だから仕方がない。素晴らしいのはバットの角度。ここまでの連続写真を比べて欲しい。1度、投手側にバットのヘッドが入ってから、ほとんど角度が変わっていないのが分かるだろう。ここのブレが少なければ、それだけ正確にミートできる。

懐の深さが出ているのが(6)の瞬間。右ひじの脇が締まり過ぎていないから、両肘が柔らかく使える。バットの出てくる角度も、申し分ない。変化球で泳いだ分、少しだけ腰の開きが早いが許容範囲。もっと下半身や体幹が強くなれば、完璧に近い形で泳がずに我慢できるようになるだろう。

(7)はインパクトの瞬間ではないが、打球の飛んだ位置から推測すると、体の中で球を捉えている。変化球で少し泳ぎ気味だったが、左手でこねるようになっていない。だから右翼線に飛んだライナーの打球がファウルにならず、二塁打になる。両腕が伸びきらず、少し曲がっていて余裕があるのもいい。(8)の形を見ても、球を押し込むようにバットを使えているのが分かる。

腰が回り出した(6)から(9)のベルトのラインを見ると、腰が地面に対して平行に回っている。右腰が下がって回るとあおり打ちになり、打球が上がらない。少しだけ泳いでいても、打球が上がったのは、腰が平行に回っているから。(10)のフィニッシュでも、左手を離さず、バットが体に巻き付くように使えている。足の速い左打者はこの時点で走りだしてしまいがちだが、振り切るまでしっかりバットを振っている。簡単なようで、なかなかできる左打者はいない。(11)から(12)にかけて走りだしているが、このタイミングなら申し分ない。

藤原の良さは、左投げ左打ちにある。右投げ左打ちと違い、利き手が後ろにあるから、グリップとバットが体から離れ過ぎずにスイングできる。まだ体が小さく、フリー打撃を見ても非力に感じるが、実戦でよく見えるのは体の左サイドがうまく使えているから。あとは、とにかく体を大きくすること。よく体重が増えると走るスピードが遅くなると勘違いする選手がいるが、筋肉で増やすなら、そうはならない。それに外野手は打ってなんぼのポジション。日本を代表する打者になってもらいたい。

◆藤原恭大(ふじわら・きょうた)2000年(平12)5月6日、大阪府生まれ。小6でオリックスジュニアに所属。枚方ボーイズでは全国V。大阪桐蔭で甲子園に4度出場し、甲子園通算5本塁打は森友哉に並ぶ左打者最多。昨夏アジア選手権は18打数8安打(打率4割4分4厘)でベストナイン。18年ドラフト1位でロッテ入団。181センチ、78キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1500万円。