ソフトバンク甲斐野が衝撃デビュー、中継ぎ抜てきも

西武との練習試合で登板した甲斐野(撮影・栗木一考)

<球春みやざきベースボールゲームズ:ソフトバンク3-8西武>◇27日◇宮崎アイビースタジアム

ソフトバンクのドラフト1位甲斐野央投手(22=東洋大)が27日、昨年リーグ覇者の西武相手に衝撃の対外試合デビューを飾った。

西武との練習試合(宮崎アイビー)に7番手として9回に登板。直球は最速155キロを計測。球威ある球でバットをへし折った。1回を1奪三振無安打無失点の快投。新人初の160キロ到達を予感させる右腕が、開幕からセットアッパーに抜てきされる可能性が高まった。

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快速右腕が衝撃のデビューだ。甲斐野がマウンドに上がると、その表情から緊張の影がすっと消えた。白球を手に「腹をくくって、やってやるんだ」とスイッチオン。先頭の山田を直球2球で追い込み、直球のサインに首を振った。「決め球のフォークを投げたかったので」。自信を持って低めに落とし、空振り三振を奪った。

続く中田は直球で詰まらせ三ゴロ。圧巻は木村への初球だ。この日、最速となる155キロで球場をドッと沸かせた。最後は内角への153キロ。バットをへし折り、4安打と当たっていた右打者を三ゴロで圧倒。わずか9球、3人で西武打線を料理した。

ルーキーイヤーでは史上初となる160キロ到達の可能性も感じさせるデビューだった。工藤監督から「155キロを出していたし、楽しみです。すばらしい投球だった。あの球を見ていたら短いイニングなら問題ない」と絶賛された。サファテ、加治屋、石川、左の嘉弥真ら中継ぎ陣は故障明けの選手が多く、万全の状態で開幕を迎えられるかは微妙。この日のような投球を続ければ、開幕から7回、8回を任される可能性は高い。

同期入団のライバルたちの存在に刺激を受けている。この日は中学3年時に同じ選抜チームで実力の違いを見せつけられ、一時は投手を断念するきっかけとなった西武のドラフト1位松本航投手(22=日体大)も球場にいた。直接会う機会はなかったが、連絡はもらっていた。東洋大の同期でDeNAドラフト1位上茶谷大河投手(22)に対しても「負けたくない」と闘志をあらわにする。リーグV奪回を狙うソフトバンクに、また1人、気骨のある剛腕が加わった。【石橋隆雄】

<きょうの甲斐野評>

▽ソフトバンク倉野投手コーチ「衝撃的なデビューだった。体全体を使って投げていた。今日一番の収穫だった」

▽ソフトバンク栗原(甲斐野とバッテリーを組み)「マウンドに上がったら雰囲気が変わる。目つきが変わる。(ブルペンより)球は速いし、怖い」

▽西武辻監督「球は速いけど、そう甘くはない。真っすぐは、プロの1軍レベルは150キロを出しても(空振りは)難しいからね。球が速くて魅力的な投手だとは思う」

▽西武木村(153キロ直球でバットを折られ三ゴロ)「真っすぐは力があった。ホップするサファテとはまた違うドーン系ですね。投げっぷりがいい」

▽西武中田(148キロ直球で三ゴロ)「強い球。速さを感じた。ドラ1の投手だなという、いい球だった。球質も良かった」

▽西武山田(141キロのフォークで三振)「えぐかった。同級生とは思えない。ドリルフォーク。真っすぐと一緒の軌道で来た」

◆新人の球速 プロ野球では16年CSで165キロを出した大谷翔平(日本ハム=現エンゼルス)ら8人が160キロ以上を計測しているが、新人の160キロ到達はまだない。大谷の1年目はオープン戦、公式戦を通じて157キロが最速だった。新人では与田剛(中日=現監督)が90年8月15日広島戦で157キロを出している。松坂大輔(中日)は西武時代の99年4月7日日本ハム戦で155キロを出し、衝撃的なプロデビューを飾った。甲斐野は昨年5月16日立正大戦でメジャースカウトのスピードガンが99マイル(約159キロ)を計測。同8月28日、高校日本代表相手の壮行試合では、神宮球場表示で大学生最速の158キロを出している。

◆甲斐野央(かいの・ひろし) 1996年(平8)11月16日生まれ、22歳。兵庫県出身。東洋大姫路から東洋大を経て昨年ドラフト1位で入団。高校時代は三塁手だったが、大学から投手に転向。最速159キロの直球とフォークボールが武器。身長187センチ、体重86キロ。右投げ左打ち。