東北社会人野球主要6チームの新人28人を特集

TDKの前列左から深江、青木、後列左から石塚、佐藤開、夏井脩

<みちのくプラス>

みちのく社会人ルーキーが、プロ野球に進んだ同年代ライバルに刺激を受けながら、さらなる飛躍を誓った。昨年7月の都市対抗には全国初切符を獲得したトヨタ自動車東日本(岩手)と、七十七銀行(宮城)が出場。11月開催の日本選手権ではJR東日本東北(宮城)が、優勝した三菱重工名古屋(愛知)に大善戦した。06年のTDK(秋田)以来となる東北勢の都市対抗制覇に向け、主要企業6チームの内定社員総勢28人が新戦力に加わった。【取材・構成=野上伸悟、鎌田直秀】

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◆TDK

TDKの165センチ左腕・佐藤開陸(18=能代松陽)は体も技術もSからLサイズに成長し、3年後のプロ入りにも挑む。新たなユニホームはLが用意され「今はブカブカ。上半身も下半身も線が細いので、まずは体を大きく。フォームのバランスも良くなるし、スピードもキレも上がると思う」。武器となるスライダーをより生かすためにも、現在最速140キロの10キロ増も目標に掲げた。

高2秋には東北大会4強。準決勝で聖光学院(福島)に敗れ、あと1歩でセンバツ切符を逃した。高3夏には日本ハムドラフト1位の吉田輝星投手(18=金足農)らと並ぶ「秋田ビッグ4」と呼ばれた。県準決勝でロッテにドラフト4位指名された山口航輝外野手(18)の明桜に惜敗し「カナノウの準優勝も内心はすごく悔しくて、うらやましくも思えた」。仙台大進学の佐藤亜蓮投手(18=由利工)を含め「吉田らに追いつき、追い越したい。プロで対戦できるような投手になりたい」と、切磋琢磨(せっさたくま)は続く。

背番号は能代市出身で阪急(現オリックス)などで活躍した山田久志氏(70)の「17」に決定。「縁も感じるし、秋田の盛り上げにも貢献したい」と宿敵、大先輩の背中を追う。

▼夏井脩(男鹿出身の夏井4兄弟末っ子遊撃手)「守備はもちろん、気持ちを前面に出したプレーで秋田の盛り上がりに貢献したい」

▼深江(大学選手権決勝で本塁打放った日本一の4番)「都市対抗、日本選手権優勝のためにフルスイングとフレッシュさを出す」

▼石塚(強肩魅力のスイッチヒッター)「送球が一番の生命線。盗塁阻止率や捕手からのけん制で正捕手を奪うことが目標です」

▼青木(甲子園4強、大学でも8強を2度導いた鋭い打撃魅力)「全国優勝の経験はないので社会人で日本一になって東北に恩返し」

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◆トヨタ自動車東日本

「津軽の大砲」と称されたトヨタ自動車東日本の桜庭佑希也外野手(18=弘前東)は「みちのくの大砲」に進化する。高校通算48本塁打を放ち、プロ志望届提出も迷ったが「3年後にはプロに上位で行けるように、走攻守すべてにレベルアップしたかった」。3拍子そろった即戦力評価を得られる成長を誓った。

理想は巨人から広島にFA移籍した丸佳浩外野手(29)だ。自身は体をグッと沈め、低いトップの位置からフルスイングが持ち味。「丸さんも低いトップから強くボールの芯を捉えていらっしゃるので参考にしている。強く速いライナー性の打球の延長が本塁打という感覚も似ていると思った。守備も脚力もすべてそろっている」。昨夏の青森県大会準決勝敗退後、丸の映像を何度も見てきた。

木製バット対応のため、フォーム改造も思案したが、トヨタ自動車東日本の三鬼賢常監督(57)に指摘された左肩の下がりだけは修正した。「金属ならどこでとらえても飛んでいくが、より体に近い位置で力を伝える必要を感じた」と振り込んだ。筋力トレーニングなども含め、約5キロ増量。「まずは全国大会に出場して支えてくれた人たちに恩返ししたい」。高校時代は経験できなかった全国舞台での1発を成長アピールの号砲とする。

▼斎藤(本職の外野以外にも投手や内野もこなすオールラウンダー)「人間性もしっかり成長し、何事にも全力でやります」

▼葛岡(最速136キロながら切れ味あるスライダーやチェンジアップ武器)「強気な投球で勝利に貢献できる選手になります」

▼赤堀(しなやかに腕を振る角度ある直球武器)「自分自身もレベルアップし、大舞台でチームの勝利のために活躍します」

▼鷹羽(左打者の内角えぐる直球抜群)「伸びのあるストレートには自信があります。野球も仕事も、必要とされる人間になりたい」

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◆七十七銀行

細川は偉大な先輩2人のDNAを受け継ぐ。同じ左腕で盛岡東シニアの先輩、マリナーズ菊池雄星(27)に憧れ花巻東に入学。そして2学年上のエンゼルス大谷翔平(24)との出会いが転機になった。入学して間もない紅白戦の初対決で衝撃を受けた。花巻東グラウンドの右中間ネットを越える140メートルの特大弾。すでに140キロを投げていた細川は「生まれて初めてあそこまで飛ばされた。このままでは通用しない」とサイドスロー転向を決意した。

2年時に先輩たちもつけた出世番号「17」を背負い、夏の県大会決勝で盛岡大付・松本裕樹(22=ソフトバンク)との投げ合いを制した。甲子園では4強進出と活躍した。細川は「今の自分があるのはあの本塁打のおかげ。背が低い自分が生きる道を見つけられた」。

七十七銀行でも17番をもらった。日大ではリーグ戦未勝利に終わっただけに「もう1回初心に帰って頑張りたい」と再起に燃える。小河義英監督(41)は「左打者の内角をバンバンつけるのはすごい。球速以上の威力を感じる」と期待する。シニア時代に菊池から譲り受け高1まで愛用したグラブは今でも大切にしている。大谷から言われた「練習の時から周りはお前の姿勢を見ている。背中で引っ張れ」のメッセージは忘れない。「2人を目指したいなんて大きなことは言えないですが、頑張ります」。東北の地で輝きを取り戻す。

▼佐野(50メートル6秒0の快足二塁手はイチローを尊敬)「非常にレベルの高いチームでプレーできて光栄。3拍子そろった選手を目指す」

▼湯浅(弟は巨人湯浅大で毎年末に一緒に自主トレ)「信頼される選手になり都市対抗で活躍したい。2年後に弟と同じ舞台に立てれば」

▼森(186センチの大型右腕で兄は楽天森雄大)「気持ちを前面に出す投球で、チームにいい影響を与えたい。目標の兄をいつか超えたい」

▼和田(盛岡三から国立静岡大に進んだインテリ145キロ右腕)「東北で野球を続けられるのがうれしい。勝利につながる投球をしたい」

▼田下(高千穂大では1年春から正捕手で遠投116メートル)「肩とゲームメークには自信がある。レギュラーをとり都市対抗に出たい」

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◆JR東日本東北

▼桜糀(ソフトバンク松本と盛岡大付同期)「全国舞台では高校、大学と苦い思いをしてきたので、ピンチの場面を任される投手に」

▼山田(全国経験はないが多彩な変化球が持ち味)「最速144キロですが、速く見せる工夫で中継ぎでしっかり抑えたい」

▼菅野(楽天ドラ8鈴木は高校同級生)「簡単にアウトにならない打撃と走塁で、もう1つ高いレベルを目指したい」

▼小山(亜大では井端2世と称された職人内野手)「捕ってから速いプレーを見せて、持ち味の守備で都市対抗出場に貢献したい」

▼西藤(高校通算28発のパンチ力)「勝負強い打撃で数多く試合に出て、都市対抗出場に貢献できる活躍がしたい」

▼鈴木(宮城・女川町出身で大学では首位打者、打点王、ベストナイン獲得)「広角打法で地元の温かい応援にも応えたい」

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◆きらやか銀行

▼鈴木(岐阜リーグで4年春に3勝の本格左腕)「1年目から出られるようにしたい。苦しい場面でも強気でいけるのが自分の持ち味」

▼伊藤(南東北リーグで首位打者2度、ベストナイン3度の安打製造機)「東京ドームが真っ赤に染まる都市対抗の雰囲気を味わいたい」

▼西ケ谷(東農大北海道オホーツクではソフトバンク周東と三遊間コンビ)「期待を抱かせる選手になり都市対抗で本塁打を放ちたい」

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◆日本製紙石巻

▼多崎(名門駒大で2回戦の先発を任せられた長身サブマリン)「下手投げの強みを生かして戦力になり、都市対抗出場に貢献したい」

▼宮内(4年秋に首都2部で9試合で4勝のMVP)「連投が利き先発も救援もいける。思い切りの良さで全国大会出場に貢献したい」

▼赤嶺(亜大OBソフトバンク松田から打撃が似ているとスパイクを贈られた熱男2世)「出塁率を意識し1年目からレギュラーを目指す」