阪神打線は得点力上げろ/評論家座談会・打撃編

今季の展望を語り合う、前列左から権藤博氏、吉田義男氏、広瀬叔功氏、後列左から山田久志氏、梨田昌孝氏、真弓明信氏、中西清起氏(撮影・清水貴仁)

日刊スポーツの評論家諸氏が開幕前恒例の座談会に臨み、昨年の最下位から逆襲を狙う新生・矢野阪神を議論した。課題の打線については、ルーキー1、2番コンビ、4番大山悠輔内野手(24)らに期待を込めながら、得点力アップに向け様々な意見が飛び交った。

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-阪神は今季もやはり得点力が課題になる。どうやったら攻撃力をアップできるのか。方法論を聞きたい。

山田 新しい1、2番を務めることになりそうな木浪、近本の新人コンビがまず出塁して、それを続くクリーンアップでどこまで得点にしていけるか、というところが重要になるだろう。この1、2番、まずは新人コンビで始めるだろうけど、代わる選手もいる。どうなっていくか。

真弓 よく「つなぎの野球」と言いますけど、つないでつないで…で行ってもどこかで穴があると得点については、そこまでだからね。やはり本塁打だよ。得点力アップには。走者一塁、あるいは無走者でもコン! と1発が出れば得点が入る。やっぱり本塁打が少ないのが得点力の低さにつながっている。本塁打を増やすことが結局、近道になると思う。特にクリーンアップに関して言えばね。

梨田 本塁打に関しては中谷をどこで使うか、という問題はあるね。長打を期待できる打者だからね。現状では守るところが難しいだろう。でも本塁打はなかなか難しいよ。やはり走者を置いたときの状況判断と言うかそういうものが大事だ。走者一塁で遊撃にライナーを打ってしまうとか。そういう場面が阪神はオープン戦でも多かった。やはり状況に応じた打撃を徹底するというのは必要だ。あとは先制点。これは重要視してほしい。やはり得点力に悩むチームは最初に点を取っていくというのが大事になってくる。ここは大きなポイントだと思う。

吉田 矢野監督は、新人の1、2番、それに4番の大山は少々、悪くても使い続けないかんのと違いますか? 守りにしても木浪をショートで使うならずっと使わんとね。私はずっとそこが本職だったから言いますけど、やっぱりショートは守りの要ですからね。我慢というかね。

真弓 まあ、近本と木浪の2人がいいスタートをすれば問題はないでしょうけどね。でも新人だし、最初はよくても疲れも出てくるはず。それで調子を落としてダメになったらどうするか。糸原、北條という去年、頑張ったヤツもいるわけで。彼らをどう使うかということも考えていかないといけないとは思いますよ。

中西 新人コンビについてはシーズンのスタート、出足が大事でしょうね。本塁打が効果的といってもその本塁打が少ないのは事実です。ホームが甲子園ということもあって、そう甘くない。やっぱり走者は出て、つないでいく野球でしょう。投手力はそれなりに整備されているので、なんとかなる。つないでつないでというところでしょうね。

山田 得点力か~。阪神打線は力強さ、迫力に欠ける部分はあるよな。例えば大山が4番打者だといって、じゃあセ・リーグの5球団、あるいは他の11球団の4番打者と比べてどうなのか。現状では、ハッキリ言って、力はかなり落ちると思わざるを得ないもんな。

真弓 まさにそこなんですよね。去年の起用法を見ているとクリーンアップでもコロコロかわる。変な言い方だけど、ああすることでチーム力を弱く見せてしまっているような部分もあると思うんですね。やっぱ“ハク”をつけてやるというか。選手を大きく見せてやる必要はあると思うんですね。選手を入れ替えて起用する方法はあるけれど、やっぱり我慢して使っていかなければいけない理由はそこにもあると思うんです。

権藤 投手目線からいけば、迫力あるスイングをされるだけでプレッシャーはかかるからな。打つ打たないというよりも打者の迫力でつぶされていく部分はあるんだ。投手にはね。だからウチの打線は、打者は、迫力あるぞというように見せることは必要だと思う。

真弓 あとは、やっぱりみなさん言われるように機動力は必要でしょうね。足で揺さぶりをかける。これは矢野監督の決断力にもかかってくること。そりゃあヒットエンドランのサインで空振りして併殺になったり、ライナーを打ったりすることもある。それでマスコミとかに批判されることもあるけど、そんなことは仕方ない。矢野監督が自分自身で言っているように、どれだけ積極的にいけるか、だと思うな。

吉田 新外国人マルテについてはあまり話が出ませんな。去年のロサリオはなんというか、すっかりダマされましたけど…。

全員 あれはダマされました。開幕するまではあんなによかったのに。

真弓 でもボクは今年、もう1年、ロサリオを残していればマルテより打ったのでは、と思いますけどね。日本の野球に慣れれば多分、ロサリオはもっと打つようになったと思う。まあ外国人選手に期待していない現状は悪い傾向ではないですけどね。

梨田 確かにロサリオに関してはスコアラーの報告でもこれといった穴はないということでしたからね。可能性はあったかもしれない。

広瀬 新しい1、2番コンビと福留、糸井といってベテラン連中でどこまで広島打線に対抗できるか、楽しみというところじゃね。

◆吉田義男(よしだ・よしお)1933年(昭8)7月26日、京都府生まれ。山城、立命大から53年に阪神入団。遊撃守備の華麗さは今牛若と称賛された。ベストナイン9度。2度目の監督初年の85年に球団初の日本一。背番号23は87年の監督退任時に永久欠番となった。97、98年も阪神監督を務めた。92年野球殿堂入り。

◆山田久志(やまだ・ひさし)1948年(昭23)7月29日、秋田県生まれ。能代、富士鉄釜石を経て68年ドラフト1位で阪急入団。通算284勝はプロ野球7位。76年から3年連続パMVP、最多勝利3回、最優秀防御率2回などタイトル多数。オリックス投手コーチや中日監督などを歴任した。06年野球殿堂入り。

◆権藤博(ごんどう・ひろし)1938年(昭13)12月2日、佐賀県生まれ。鳥栖、ブリヂストンタイヤを経て61年中日入団。1年目に35勝を挙げ、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、新人王、沢村賞を獲得。引退後は中日、近鉄などでコーチを歴任。98年に横浜の監督に就任し1年目で日本一。今年1月野球殿堂入り。

◆梨田昌孝(なしだ・まさたか)1953年(昭28)8月4日、島根県生まれ。浜田から71年ドラフト2位で近鉄入団。88年に引退。00年監督に就任し、01年リーグ優勝。04年近鉄球団消滅とともにユニホームを脱いだ。08年から日本ハムを率い09年リーグV。11年に勇退し、16年から18年途中まで楽天監督を務めた。

◆広瀬叔功(ひろせ・よしのり)1936年(昭11)8月27日、広島県生まれ。大竹から55年南海入り。高校時代は投手もプロ入り後に内野手、後に外野手に転向し才能が開花。野村克也氏に「天才」と絶賛された。61年から5年連続パ盗塁王。64年首位打者。通算596盗塁はプロ野球2位。78年から3年間南海監督。

◆真弓明信(まゆみ・あきのぶ)1953年(昭28)7月12日、熊本県生まれ。柳川商、電電九州から72年ドラフト3位で太平洋入団。78年オフに阪神に移籍。83年首位打者。85年は1番打者を務め、34本塁打、84打点、打率3割2分2厘で日本一に貢献。初回先頭打者本塁打通算38本はセ記録。09年から3年間阪神監督。

◆中西清起(なかにし・きよおき)1962年(昭37)4月26日、高知県生まれ。高知商、リッカーを経て83年ドラフト1位で阪神入団。85年に最優秀救援投手となり、日本一メンバーに。96年引退。通算75セーブは球団5位。05年には阪神1軍投手コーチとして、ウィリアムス、藤川、久保田の「JFK」を率いた。

◆一枝修平(いちえだ・しゅうへい)1940年(昭15)7月24日、大阪府生まれ。上宮、明大、河合楽器を経て64年中日入団。66年にセ遊撃のベストナイン。近鉄、阪神と移り74年限りで引退。阪神、中日でコーチを歴任。阪神では吉田義男、中日では星野仙一と、個性派監督を補佐し、球界の名参謀の異名を取った。