阪神投手陣は一番いい/評論家座談会・投手編

今季の展望を語り合う、前列左から権藤博氏、吉田義男氏、広瀬叔功氏、後列左から山田久志氏、梨田昌孝氏、真弓明信氏、中西清起氏(撮影・清水貴仁)

日刊スポーツの評論家諸氏が開幕前恒例の座談会に臨み、昨年の最下位から逆襲を狙う新生・矢野阪神を議論した。西勇輝投手(28)、オネルキ・ガルシア投手(29)と先発2枚を補強した投手陣に高く評価する声が集まった。

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-投手陣はどうみる。現状で決まっている先発ローテーション投手は、メッセンジャー、岩貞、西、ガルシア、青柳だが。

真弓 西、ガルシアの加入がやはり大きいね。先発陣は今までも他球団に比べて安定していたが、さらに強化できたんだから。

権藤 ガルシアはいいよ。立ち上がりがどうとか、メンタル面が弱いとか言われていたが、私はまったく心配しなくていいと思う。球威、球筋、コントロールと、いずれもいい。必要以上に細かいことを言われなかったら、しっかり勝てるピッチャーだよ。

山田 西もしっかり結果を出すはずだ。パ・リーグであの強力打線を相手に2桁勝っていたんだからね。セ・リーグは楽とまでは言わないけど。いずれにしても、投手陣全体を見たら、監督、コーチが起用法を間違えなければ、大丈夫なスタッフだと思う。

吉田 ただ、小野、才木、望月ら、期待していた若手が伸び悩んでいる。

中西 キャンプを見ていても、ブルペンで球数が少ないところは気になってました。

広瀬 藤浪はどう?

中西 自主トレ、キャンプでフォームを固めて、オープン戦に臨むものだけど、3月に入ってから腕を下げるというのは…。キャンプは何だった? となってしまう。しかし、そう言っていても始まりません。とにかく、150キロを超えてくるピッチャーは他にいないんだから。“これ”というフォームを早く定めて、再生していかないと。

山田 まあ、それでも他球団に比べたら、メンバー的には阪神が一番いいよ。巨人も、飛び抜けたピッチャーが1人いるだけだから。

-開幕投手に指名されたメッセンジャーは。

権藤 彼は戦い方を知っているし、ゲームを作れる。ただ、今は最初から最後まで1人のピッチャーが抑えきる時代じゃないからね。そういう意味で気になるのは抑えのドリス。見ていて、今日はストライクが入るか…と、どうしても不安になるんだよ。私は藤川の抑えでもいいと思うが。

梨田 もちろん藤川は実績もあるが、オープン戦を見ていると、以前よりはちょっと力が落ちている気がする。桑原も2、3年前からすると…。球の力でいえば、抑えはやはりドリスだと思う。

真弓 リリーフ陣でいえば、新加入のジョンソンは十分戦力になるとみている。シーズンに入ったら、もっとスピードが出てくるだろうし、もしかしたら抑え候補になるのでは?

-いずれにしても、今年も投手陣への期待は大きい。

中西 とにかく、本拠地甲子園で勝たないことには、優勝は望めない。そのためにも球児、能見を1イニング限定でうまく使い、ロースコアのゲームをしっかりものにしていくしかないと思いますよ。

権藤 あとは矢野監督の腹を据えた采配に期待したい。1回やられたら起用法を変える監督がいるけど、「バカヤロー、もう1回行ってこい!」という感じでね。長いシーズン、うまくいかないこともある。そこは監督がフォローしながら、乗り切ってほしいね。

◆吉田義男(よしだ・よしお)1933年(昭8)7月26日、京都府生まれ。山城、立命大から53年に阪神入団。遊撃守備の華麗さは今牛若と称賛された。ベストナイン9度。2度目の監督初年の85年に球団初の日本一。背番号23は87年の監督退任時に永久欠番となった。97、98年も阪神監督を務めた。92年野球殿堂入り。

◆山田久志(やまだ・ひさし)1948年(昭23)7月29日、秋田県生まれ。能代、富士鉄釜石を経て68年ドラフト1位で阪急入団。通算284勝はプロ野球7位。76年から3年連続パMVP、最多勝利3回、最優秀防御率2回などタイトル多数。オリックス投手コーチや中日監督などを歴任した。06年野球殿堂入り。

◆権藤博(ごんどう・ひろし)1938年(昭13)12月2日、佐賀県生まれ。鳥栖、ブリヂストンタイヤを経て61年中日入団。1年目に35勝を挙げ、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、新人王、沢村賞を獲得。引退後は中日、近鉄などでコーチを歴任。98年に横浜の監督に就任し1年目で日本一。今年1月野球殿堂入り。

◆梨田昌孝(なしだ・まさたか)1953年(昭28)8月4日、島根県生まれ。浜田から71年ドラフト2位で近鉄入団。88年に引退。00年監督に就任し、01年リーグ優勝。04年近鉄球団消滅とともにユニホームを脱いだ。08年から日本ハムを率い09年リーグV。11年に勇退し、16年から18年途中まで楽天監督を務めた。

◆広瀬叔功(ひろせ・よしのり)1936年(昭11)8月27日、広島県生まれ。大竹から55年南海入り。高校時代は投手もプロ入り後に内野手、後に外野手に転向し才能が開花。野村克也氏に「天才」と絶賛された。61年から5年連続パ盗塁王。64年首位打者。通算596盗塁はプロ野球2位。78年から3年間南海監督。

◆真弓明信(まゆみ・あきのぶ)1953年(昭28)7月12日、熊本県生まれ。柳川商、電電九州から72年ドラフト3位で太平洋入団。78年オフに阪神に移籍。83年首位打者。85年は1番打者を務め、34本塁打、84打点、打率3割2分2厘で日本一に貢献。初回先頭打者本塁打通算38本はセ記録。09年から3年間阪神監督。

◆中西清起(なかにし・きよおき)1962年(昭37)4月26日、高知県生まれ。高知商、リッカーを経て83年ドラフト1位で阪神入団。85年に最優秀救援投手となり、日本一メンバーに。96年引退。通算75セーブは球団5位。05年には阪神1軍投手コーチとして、ウィリアムス、藤川、久保田の「JFK」を率いた。

◆一枝修平(いちえだ・しゅうへい)1940年(昭15)7月24日、大阪府生まれ。上宮、明大、河合楽器を経て64年中日入団。66年にセ遊撃のベストナイン。近鉄、阪神と移り74年限りで引退。阪神、中日でコーチを歴任。阪神では吉田義男、中日では星野仙一と、個性派監督を補佐し、球界の名参謀の異名を取った。