みちのく大学野球の春開幕 昨季王者に挑む刺客紹介

昨秋の首位打者、ベストナインからさらなる飛躍を誓う東北学院大・遠藤翼(撮影・野上伸悟)

<みちのくプラス>

みちのく大学野球の春季リーグ戦が、いよいよ開幕を迎える。仙台6大学と南東北大学は13日、北東北大学が20日。各リーグの優勝チームに与えられる全日本大学野球選手権大会(6月10日から7日間、神宮球場ほか)の出場権を争う。仙台6大学・東北福祉大(宮城)、南東北大学・東日本国際大(福島)、北東北大学・富士大(岩手)が君臨する王座に、各リーグの刺客は一矢報いることができるのか注目だ。【取材・構成=野上伸悟、鎌田直秀】

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東北学院大(宮城)の安打製造機遠藤翼外野手(4年)が、東北福祉大の牙城を崩すべくリベンジに燃える。昨秋のリーグ戦では、初戦は敗れるも3安打、2戦目では4安打を放ち勝利に貢献した。勝ち点をかけた第3戦は1安打に終わり、1-6で敗戦。王者に唯一の黒星をつけながら、勝ち点4の2位に終わっただけに、今年にかける気持ちは強い。

36打数18安打の5割で首位打者とベストナインを獲得。「自分なんかが取っていいのかなと驚きの方が強かった」とまさに無欲のタイトルだった。ヤマなどは張らず、来た球に順応するイチロータイプの天才肌。楽天岸孝之投手(34)、西武本田圭佑投手(25)、西武星孝典2軍コーチ(36)らを輩出してきた菅井徳雄監督(62)は、「勝負強く、どんな球にも対応できる。自然に反応できるのは天性。広角に打てて長打もあるし、走れる」と高い評価を与える。そして「守備をもっと鍛えれば面白い」とさらなる成長を期待する。

4番を打つ主将の渡辺翔太捕手(4年)は2年秋に首位打者を獲得している。3番を打つ遠藤との首位打者コンビは他校への脅威になる。無欲だった昨秋とは違い、主力としての自覚も芽生えてきた。「自分が昨年以上に活躍してチームに貢献したい。全国に出たことがないので、今年こそはと思っている」と、06年春に岸らを擁して成し遂げて以来のリーグ制覇に突き進む。

◆遠藤翼(えんどう・つばさ)1997年(平9)5月16日生まれ、宮城・登米市出身。西郷小2年から西郷ライオンズで野球を始め投手、南方中では外野手。古川学園では2年秋の県3位が最高。家族は両親と姉2人。50メートル走6秒2。181センチ、80キロ。

◆仙台6大学リーグ展望 東北福祉大はドラフト候補の津森宥紀(4年=和歌山東)、山野太一(3年=高川学園)ら投手陣の安定感抜群。攻撃も岩崎魁人捕手(4年=九州国際大付)ら勝負強い打者が並ぶ。東北学院大も経験豊富。仙台大は小林快(4年=佐野日大)、稲毛田渉(4年=帝京)ら投手陣の駒がそろう。東北工大の昨秋新人王・後藤裕弥外野手(2年=日大山形)、東北大・鈴木優作捕手(4年=春日部)、宮城教大・佐々木陸内野手(4年=大船渡)らの打撃も期待だ。

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石巻専大(宮城)の無安打無得点エース菅野一樹(4年=聖和学園)が、4季ぶり制覇をつかみ取る。最速147キロで、昨秋の福島大戦で初の偉業を経験。「自分はプロを目指してやっている。全国舞台にいかないと、スカウトの方たちに認めてもらうことは難しい。支えてくれている仲間と力を合わせて、必ず東日本国際大を倒したい」。自身が5勝0敗と活躍して頂点に立った17年春の再現に挑む。

優勝をことごとく阻まれてきた悔しさは当然あったが、東日本国際大の粟津凱士投手(22)が昨秋ドラフトで西武に4位指名されたことは、大きな励みであり、指標にもなった。直接助言を受けたことはなくても、変化球でカウントも奪え、決め球にも出来る強さを学んできた。「スライダーはより真っすぐに近く。自分の武器のシンカーにも、より制球力を求めています」。昨春に右肘を痛めたことにより、トレーニングや日常生活への意識も変わった。「粟津さんを超えないといけない」と目標は高く定めている。

「今年はエースとしての責任を背負う気持ちが、いつも以上に強い。ノーヒットノーランも自信にはつながっています」。王者との直接対決は最終節。そこまでに負けるわけにはいかない。

◆菅野一樹(かんの・かずき)1997年(平9)10月5日、仙台市生まれ。郡山小3年から郡山チャレンジャーで野球を始め、郡山中では仙台東部リトルシニアに所属。聖和学園2年秋の地区大会で仙台育英を撃破するも、甲子園出場はなし。石巻専大では1年春から登板。180センチ、81キロ。右投げ右打ち。家族は両親と弟2人。血液型O。

◆南東北大学リーグ展望 東日本国際大は昨季首位打者の能代勘介外野手(4年=北海道栄)ら打力は1枚上。西武の粟津、船迫が抜けた投手陣の踏ん張りがカギだ。石巻専大も菅野一樹投手(4年=聖和学園)に加え、松沢寛人投手(3年=糸魚川)の復調期待。東北公益文科大は最速145キロ左腕・石森大誠(4年=遊学館)、同153キロ右腕・赤上優人(3年=角館)に注目。福島大は粘りが身上。日大工学部の昨秋新人王・野地柊汰投手(2年=福島工)も成長著しい。

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ノースアジア大(秋田)の右腕・中村彪(2年)が、ジャイアントキリングからのリーグ制覇を狙う。昨秋のリーグ戦では王者・富士大との開幕カード2戦目で、初先発初完投勝利。6安打1失点9奪三振の力投で、楽天入りした鈴木翔天(22)との投げ合いを制した。続く第2節の八戸学院大との初戦では、巨人ドラフト1位で4日に初登板初勝利を挙げた高橋優貴(22)を相手に完投勝利。「すごい投手に勝てたのはビックリした。もちろん自信にもなりました」。リーグの2強を封じる大仕事をやってのけた1年生は、勢いそのままにシーズン4勝を挙げ、最優秀防御率賞を獲得した。

173センチ、68キロと小柄だが、最速143キロの直球を低めに丁寧に集め、スライダーとチェンジアップを効果的に使う。選手、コーチとしてプロ野球5球団を渡り歩いた山中潔新監督(57)は「野球センスが抜群。スピード、キレ、コントロールに加え、けん制、フィールディング、クイックも素晴らしい。好投手に必要なものが備わっている」と高く評価する。そして「食事とトレーニングで分厚い体ができてくれば、もっと厳しいことを求められるし上を目指せる」と将来性にも太鼓判を押した。

あどけなさが残った昨年の面影はない。横山凌斗主将(3年)も「気持ちも強いし、絶対的なエース」と信頼を寄せる。この冬は人一倍走り込みやウエートトレーニングに励んできた。「今年は相手からも研究されるはずなので、もっとレベルアップしないといけない」とエースの自覚も出てきた。山中監督から新しい変化球を学ぶなど、さらなる進化に余念がない。「去年がまぐれと言われたくない。今年は5勝して優勝したい」と、富士大の11連覇阻止に名乗りを上げる。

◆中村彪(なかむら・ひょう)1999年(平11)7月27日生まれ、岩手・野田村出身。野田小4年から野球を始め野田中で軟式、久慈DREAMSではKボールで東北大会準優勝。久慈工では1年夏の16強が最高。趣味は釣りで海釣りからバス釣りまで。家族は両親と兄、弟。173センチ、68キロ。

◆北東北大学リーグ展望 11連覇に挑む富士大は、昨秋に打点王とベストナイン獲得の吉田開外野手(4年=専大北上)を中心に層の厚さは健在。八戸学院大も大道温貴(3年=春日部共栄)、中道佑哉(3年=八戸学院野辺地西)の投手陣に加え、野手陣もバランスが良い。青森大は安原健人内野手(2年=天理)ら打撃が強力。ノースアジア大は下級生に勢いがある。岩手大の浪岡凌佑投手(3年=三沢)、青森中央学院大の千葉愛斗内野手(2年=一関学院)にも注目だ。