阪神福留「やっぱり寂しい」戦友上原氏に捧ぐマルチ

阪神対ヤクルト 4回裏阪神1死、福留は中に二塁打を放つ(撮影・上山淳一)

<阪神3-2ヤクルト>◇21日◇甲子園

阪神がリーグ最年長になったベテランの働きで3位を死守した。福留孝介外野手(42)が初回に先制打を放つと、4回には左中間への二塁打で出塁。決勝のホームを踏んだ。巨人、メジャーで活躍した上原浩治氏(44)が20日に現役引退を発表。リーグ最年長野手の福留が最年長になったが、実力は健在。チームは貯金を「1」とし、甲子園の連敗を「5」で止めた。

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ベテランがまたチームの危機を救った。先制点をたたき出したのは42歳福留のバットだった。初回2死走者なしから糸井の四球、大山の左前打で一、三塁となって迎えた第1打席。カウント3-1からヤクルト原のスライダーを狙い打ちし、二遊間を破る。日が落ちきらない甲子園に大歓声が響いた。

続く4回の打席でも初球の変化球を鋭いスイングで振り抜き、左中間への二塁打。「まあ、まあ、出ないよりは出た方が良かったんじゃない。青柳も、リュウ(梅野)も頑張っていい流れになっていければ、いいんじゃないかな」。クールに振り返ったが、この日の2安打はいずれも得点に絡むヒット。さすがの勝負強さだ。

ともに球史を彩った先輩にささげる惜別のマルチでもあった。20日に上原氏が現役引退を発表した。2学年上に当たるが、98年ドラフトでプロの世界に飛び込んだ共通点がある。「敵チームでしたけど、アマチュアの頃から一緒に戦うことも多かった。心強い投手」。社会人時代の97年インターコンチネンタル杯(スペイン)では、一緒に日の丸を背負って世界一軍団キューバの連勝を151で止めた。

プロ入り後は巨人、中日と同一リーグの主力として幾度となく対戦した。04年アテネオリンピック(五輪)、06年WBCでも代表として国際舞台を経験。「技術もさることながら、気持ちが前面に出て向かって来られるというのは打者としては攻めづらいというところがあった。やっぱりちょっと寂しい。ただそれ以上、僕が言えることはない」。一時代を築いた一流同士だからこそ、その決断の重みが分かる。

上原の現役引退によって福留がセ・リーグ最年長選手になった。今もなおレギュラーとしてフル稼働する5番打者に矢野監督は「コウスケの勝負強さを出してくれた。明日も打ってくれるんじゃないでしょうか」と期待する。チームは連敗を3で止め、3位を死守。甲子園の連敗も5で止めた。借金危機を救ったのはセ界最年長のバット。卓越した技術と誰よりも深い読みは、衰えることを知らない。【桝井聡】