阪神高山の劇弾に「野球ってすごい」矢野監督も感動

阪神対巨人 12回裏阪神1死満塁、代打高山は右越えサヨナラ満塁本塁打を放ち矢野監督(左)と歓喜の抱擁をかわす(撮影・加藤哉)

<阪神8-4巨人>◇29日◇甲子園

阪神が劇的なグランドスラムで2位に浮上した。12回1死満塁で高山俊外野手(26)が、右翼ポール際に今季1号の代打満塁サヨナラ本塁打を放った。阪神-巨人の伝統の一戦では史上初となる劇弾は、甲子園での巨人戦10連敗という球団ワースト記録を阻止する大きな1発になった。

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甲子園の夜空に白球が舞った。代打サヨナラ満塁本塁打という劇的すぎるエンディング。ヒーローは高山だ。ベースを一周するとナインに歓喜のシャワー浴びせられ、本塁で尻もちをついて苦笑い。「いや~もう、自分が打ったかよく分からない。テレビで見ている感じで自分じゃないようだった…」。駆け寄ってきた矢野監督を見つけると熱く抱擁。指揮官の背中には、泥だらけになった高山の手形がくっきりと残った。

無我夢中だった。4-4と同点で迎えた延長12回1死満塁。植田に代わって打席に立った。この日ベンチに残った最後の野手だった。まさに総力戦。「(植田)海にも頑張ってくださいと言われたのでそういう気持ちで打った」。2ボールからの3球目。押し出し四球も頭にちらつくカウントで、迷いはなかった。高めの変化球を鋭いスイングでふり抜く。大歓声に押された打球は右翼ポール際に飛び込んだ。高山が「(人生で)たぶん初めて」というサヨナラ弾。代打サヨナラ満塁弾となれば、阪神では96年グレン以来。巨人戦に限れば、球界初のミラクルだ。

午後10時30分に決着がついたロングゲームだったが、高山の1日は早朝から始まっていた。この日のウエスタン・リーグ、オリックス戦(鳴尾浜)に志願して出場。「結果も出なくて打席にも立ちたかった」。ルーキー近本、木浪らの台頭でこの試合まで出場20試合とチャンスも激減。必死にもがいていた。今季から気分を一新するために打撃手袋、エルボーガードなどを光り輝く金色に変更。3年前の新人王が、がむしゃらに野球に向き合っていた。

筋書きのないドラマでチームは巨人を追い抜き、2位に浮上した。定着しつつある「矢野ガッツ」を連発した矢野監督もさすがの出来事に「うれしいですけど野球ってすごいですね」と声を上ずらせた。そして「こんなドラマが、想像しないようなことばかりが起きてね」と大感動だ。昨年7月から続いていた球団ワーストタイとなる甲子園の巨人戦連敗も9でストップ。貯金は今季最多の5まで積み上がった。猛虎の進撃が止まりそうにない。【桝井聡】