「小さな鉄腕」武田久最多セーブ 日本ハム15年史

09年10月1日付 日刊スポーツ紙面

<北海道日本ハムファイターズ15年史>

日本ハムは2018年で北海道移転15年。過去の名場面、珍場面を、当時の紙面とともに振り返ります。

<09年10月1日付>

北海道移転後の日本ハム投手陣を支えた「小さな鉄腕」が、リーグ優勝目前のオリックス戦で勲章を手にした。170センチの武田久が、9回のマウンドを無失点で締めた。2安打を浴び、無死一、三塁とピンチを背負ったが、動揺することなく後続を断った。「1人、1人、できれば三振を取りたかったけど、それは無理だった。今年1年、自分なりの抑えというのを考えてやってきて、力任せではなくコントロールとかキレで勝負と思ってきた」。マイケルの移籍に伴い、セットアッパーからクローザーに転向した年。この日33セーブ目を挙げ、残り試合数との兼ね合いで「最多セーブ」のタイトルが確定した。

大きな体も、速いボールも、ない。全身を使い、抜群の制球で凡打に仕留めるのが投球スタイル。走者は背負っても、本塁まではかえさない。この日も無死一、三塁のピンチを、遊ゴロ、中飛。どちらもスライダーで2死までこぎつけ、最後はシュートで右打者・山崎浩を詰まらせて三塁ゴロ。梨田監督は「すごいことだね。体が大きくて、球が速くてというイメージが抑えだけど、それを変えた」とたたえた。

06年の「最優秀中継ぎ投手」に続くタイトル。「みんなが頑張ってくれたから、僕にセーブがつく。野手の人も打ってくれたり。周りのみんなに感謝します」。この後、17年の退団まで積み上げたセーブ数は「167」。534試合を投げ、ホールドも「107」ある。両ひざにメスを入れ、40歳となったいまでも、社会人野球「日本通運」で投手兼コーチとしてプレーする。教え子の生田目は昨秋のドラフト3位で日本ハムに入団し、先日1軍デビューしたばかり。周囲に流されず、野球と向き合う姿勢や生きざまは、プロを目指す社会人チームの若い選手たちの教本になっている。