3歳でもエンジョイベースボール 広瀬氏の野球教室

広瀬氏は「ひじを曲げて振ってごらん」と呼びかけ、お手本を見せる

<週中ベースボール>

野球って一体、何歳くらいから教えたらいいものだろうか。元プロ野球選手が幼児対象の野球教室を開いているというので、取材に出掛けた。場所は東京都大田区の「Kids Duo International池上」。室内の運動スペースをのぞくと、好守巧打とガッツあふれるプレーでファンを魅了した、元日本ハムの広瀬哲朗氏(58)が子どもたちに囲まれていた。さて、どんな指導をしていたのか。

広瀬氏が部屋に入っていくと、子どもたちが一斉に足元に群がった。3歳から6歳の子供たちだ。こりゃ、教えるのは大変だな~と思っていたら、「はい、みんな整列!」という広瀬氏の掛け声で、18人の子どもたちはちゃんと3列に並んだ。

この日で3回目とあって、子供たちはすっかり広瀬氏になじんでいた。女の子も結構いる。柔軟体操をやってから、約50分の「野球教室」が始まった。

(1)ひじを動かす

野球では投げる時も打つ時もひじは曲げるもの。「さあ、腕を振ってみて。ひじを伸ばしたままではだめ。曲げて振ってごらん」。早い段階で格好良くひじを動かす習慣をつけさせるのが狙いだ。

(2)壁あて

広瀬氏は壁に向かって90度の角度で子どもたちを立たせた。まずは気をつけの姿勢をとらせ、プラスチック製のボールを握っている反対側の足を上げさせる。「はい、投げて!」。(1)の要領で投げさせて、跳ね返ってきたボールをキャッチしたら、前に移動していく。これを繰り返す。

(3)両手をたたきながらボールを捕る

広瀬氏はプラスチック製のバットを持った。「これからノックするよ。この間も言ったように、両手をたたきながらボールが来るのを待つんだよ」。広瀬氏から3、4メートル離れた場所で、子供たちは腰を落とし、拍手をしながらボールを待つ。ボールが来たら両手でキャッチする。

「両手でボールを包み込むように捕るんだよ」。初めて野球をやる子はゴロを上から押さえ付けて捕りがち。この日も何人かは、ボールの動きばかりに注意がいき、手をたたくのを忘れて、押さえ付けるようにボールを止めていた。しかし、これでは投げる動作にスムーズに移れない。両手でボールを包み込むようにすれば、自然に正しい捕球動作(手の動き)が身に付くというわけだ。

(4)捕ったら投げる

正しい捕球動作をできるようになったら、スローイングだ。「捕ったら、前に出て、投げてみよう」。ゴロは捕っただけではアウトにできない。捕ったら投げることを習慣づけることが大切だ。

ここまででおよそ25分。幼児はそろそろ飽きてくるころだ。このタイミングで広瀬氏は初めて、子供たちにプラスチック製のバットを握らせた。

(5)ワンバウンドのボールを打つ

広瀬氏は5メートル離れたところから子どもに対してワンバウンドを投げる。幼児がいきなりノーバウンドのボールを打つのは難しい。ワンバウンドなら、「落ちて上がって」とタイミングが取りやすい。ただ、一部の子供はどうしてもボールに当てられない。すると、広瀬氏は背もたれのない小さなイスを用意した。

(6)イスに座って打つ

なぜ当てられないのか。自分からボールに近づいて打とうとするからだ。イスに座れば動けず、腕だけでコンタクトするしかない。「自分が動いてボールを打ちにいくのか、ボールを待って腕だけで振るのか、どっちがいい?」。タイミングが合わなかった子もちゃんと当たるようになった。

(7)ボールの下を打つ

バットに当たる確率をさらに上げるために、広瀬氏は「ボールの下を打ってみよう」と声をかけた。ピッチャーの投げる球は重力でだんだん落ちていく。落ちていくボールの上を狙うと空振りしやすい。下を狙うと当たる確率が高くなる、という道理だ。

ついでに広瀬氏は、見ている子どもたちに「打ってる人がボールの下をたたいたら拍手しよう」と提案。子どもたちは1球ごとに「上!」「下!」と声をあげ、ボールをとらえたら拍手を送った。「反射神経も同時に養うことができる」と広瀬氏。あっという間の50分だった。

次回は、広瀬氏に幼児野球教育について聞く。(つづく)

◆Kids Duo International 3~6歳の幼児を対象に、バイリンガル教育・知能教育・運動指導・職業体験を軸としたカリキュラムが特徴の幼児園。首都圏に7園あり、来年4月には大阪・豊中にも開園予定。開園3年目の東京・池上は定員342人、冨田正聡園長。

◆広瀬哲朗(ひろせ・てつろう)1961年(昭36)1月23日生まれ、静岡県出身。富士宮北-駒大-本田技研から85年ドラフト1位で日本ハムに入団。好守巧打の内野手として活躍し、ベストナイン2回、ゴールデングラブ賞2回、オールスター3回出場。98年の現役引退後は評論活動しながら、女子野球・日本代表監督も務めた。全国各地で少年少女の指導も行い、昨年9月に株式会社WIN AGENT(体育指導のスタートライン)に入社し、首都圏各地で、野球教室を開催中。