オリックス榊原「鳥肌」勝利呼んだ憧れ巨人への力投

巨人対オリックス 7回裏途中、悔しそうな表情でマウンドを降りるオリックス榊原(撮影・横山健太)

<日本生命セ・パ交流戦:巨人3-4オリックス>◇19日◇東京ドーム

オリックス榊原翼投手(20)の熱投が、勝利を呼び込んだ。「日本生命セ・パ交流戦」で、子供のころの憧れだった巨人と対戦。6回まで岡本の本塁打の1失点だけと好投したが7回、中島に同点2ランを浴びKO。人目をはばからず、悔しがった。試合は8回1死満塁から小田が決勝の中犠飛。若き剛腕の勝利への意欲を無駄にはしなかった。

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マウンド上で、榊原が目を潤ませた。7回だ。憧れの人である阿部を抑えた直後、昨季までチームメートだった中島への初球だった。高めの直球をとらえられ、右中間への同点2ランを浴びた。巨人から白星を逃し、降板した。「かなり意識して(球が)浮かないようにしたんですが…。7回はしっかり投げきりたかった」。下唇をかみながら、ベンチへと下がった。しかし右腕の力投のナインが奮起。8回1死満塁で小田が決勝の中犠飛を放った。20歳の力投がチームに勝利を呼び込んだ。

憧れのチームとの対戦に気合は十分だった。小学6年時に作成した卒業記念のDVDで、宣言した。「僕の将来の夢は巨人にドラフト1位で入ってエースになることです」。ユニホームに袖を通すことはできなかったが、オリックスで育成からはい上がり、巨人打線に向き合うチャンスをつかんだ。この日は最速152キロの直球を軸に強気の投球で6回まで3安打1失点と好投。そして7回無死一塁の場面で、夢にまで見た舞台が現実となった。「鳥肌がたちました」。打席には野球を始めるきっかけとなった巨人阿部が立ちはだかった。

同じ千葉出身ということもあり、中学3年時に共通の知人を介し、榊原の地元・銚子のお好み焼き店に阿部が訪れた機会を狙った。サインをもらい、「頑張れよ」とかけられた言葉は今も忘れない。18日は阿部のもとにあいさつに訪れ「僕のことを覚えていてくれていました。夢の夢だったので、対戦できたら持ち味を出していきたい」と気合を入れて挑んだ。

憧れの選手を前に力んだのか、初球は低めに投げ、地面ではずんだ。1ボールからの2球目、内角への直球を捉えられた。「最初(スタンドに)入ったと思ったんですけど。なんとか押していけました」。打球はフェンス際まで飛んだが、結果は右飛。わずか2球で終わった“夢の対決”は榊原に軍配が上がった。

ローテーションを守る新進の右腕にとって、夢の舞台は今後の大きな財産になった。【古財稜明】

◆オリックスの本格派右腕 リーグ最下位に沈むオリックスだが、先発投手にはポテンシャルの高い若手右腕がそろう。今季から先発に再転向した3年目山本は、ここまで11試合に登板し、防御率は12球団トップの1・85。打線の援護なく3勝ながら、150キロ台の真っすぐと高速フォーク、カットボールで抜群の安定感をみせる。同じく3年目の山岡は昨季7勝12敗も、今季は開幕投手を務め、すでに5勝をマーク。身長172センチと小柄だが、躍動感あふれるフォームで次世代のエースとして期待がかかる。2年目のK-鈴木は規定投球回に未達ながら、ここまで7戦に先発し、防御率2・97。まだまだ粗削りだが、186センチの長身から投げ降ろす150キロ超の直球が持ち味。榊原を含め、若い本格派右腕の宝庫といえる。