＜寺尾が迫る＞

日刊スポーツ名物編集委員の寺尾博和が、野球界をはじめ、各界著名人にインタビューするスペシャル企画「寺尾が迫る」は、阪急ブレーブスなどで活躍し、歴代2位の通算350勝をマークした米田哲也氏（81）の登場です。「ガソリンタンク」と称された史上最強の右腕は、将来の野球界を背負う投手に何を思うのかに迫った。

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－通算350勝は金田正一氏に次ぐ歴代2位。史上最強の右投手です

米田　おれは過去を振り返らないんだ（笑い）。まぁ、人のできないことでも、おれならできるという考えだったからな。

－近代野球では超人的数字

米田　寂しいよ。投げすぎたらケガするなんて思想はプロとしておかしいだろ。みんな守ってる。もっと挑戦しろよと言いたい。

－登板過多は肩、肘に支障をきたすといわれる

米田　確かにボールは重いから投げ続ければどこかに負担がくる。でも、それに耐えうる力をつける。投げられる投手を作らないと、ますますレベルが低くなる。

－ご不満？

米田　見てみぃや。どいつもこいつもみんな突っ立って、上体ばっかりで投げとるやろ。ムラちゃん（村山実氏）からもキ○タ○挟んで「痛っ！」と悲鳴あげるほど下半身主導で投げたと聞いた。どんだけ四球だすんや。

－投げ込み不要論反対？

米田　ピッチャーは投げないと絶対にコントロールはつかんよ。投手の「命」はどれだけ低めに投げられるか。それとインコースだ。

－高め禁物…

米田　違うやろ。今のピッチャーの高めは、みんな抜け球やないか。そこに意識して投げられるようにならんとあかん。

－制球力が必要ということ

米田　キャンプで300球投げたから、試合で150球投げられる。おれはキャンプで計2500球から3000球は投げた。

－そんなのオバケです

米田　今の子は過保護だ。投げなきゃ勝てないんだよ。おれはほんと負けず嫌いだった。

－投げまくるから「ガソリンタンク」といわれた

米田　アオさん（青田昇氏）がつけた。よく酒を飲むからということだったが、うまく飲んだんだよ。

－鳥取県で父雅明、母愛子さんのもと、5人兄弟の末っ子でした

米田　うちは雑貨店でパン、げた、クギなど、終戦後だからなんでも売った。商売をしてたから食うには不自由しなかった。田んぼでキャッチボール、砂浜で野球をやったりね。

－アマ、プロ通じて、ほとんど故障しなかった

米田　高校で1回、球宴までに14勝した1971年にも肘をやった。それだけだ。

－プロから注目されたのは

米田　最初にプロが目をつけたのは、米子東の左投手（義原武敏氏）。地元の靴屋の主人が境高に好投手がいるといって評判になった。それがおれだよ。

－プロ野球を見たのは

米田　高2だったかな、米子のお城近くの球場で阪神と国鉄のオープン戦があった。カネさん（金田正一氏）と渡辺省三さんの投げ合いを見て「ひょっとしておれもできるかも」と思ったんだ。

－まず阪急ブレーブスが食指を動かした

米田　阪急スカウトの丸尾（千年次）さんが来た。おやじからは大学を勧められ慶大で練習をした。その際に阪神がきた。後援会から大丈夫といわれたみたいで、父親がサインしたんだ。

－「二重契約」ですね

米田　阪急は契約金200万円、月給3万円、阪神は200万円、5万円で、広島も熱心だった。

－コミッショナー裁定で決着がついた？

米田　しばらく甲子園に通っているうちにコミッショナーから呼び出された。「どっちに行きたいんだ？」と言われて阪急を選択した。決め手は阪急から提示された背番号18。球団から打者をやってくれと言われたが断った。

－1年目は9勝だが、2年目から2桁勝利が続く

米田　エースといわれたのはカジさん（梶本隆夫氏）で、素晴らしい投手だった。でも、わたしは先輩もライバルと思って野球に打ち込んだ。小山（正明）さんもライバルだった。

－三原脩監督率いる西鉄の全盛期ですね

米田　サイちゃん（稲尾和久氏）と投げ合うときなんか1点とられると負けだから。ダブルヘッダーで1戦目にリリーフで勝って、2戦目は完投、1日2勝だから、たまらんよ。

－鶴岡一人監督の南海も強い時代

米田　うちは打てなくて、ナイターに強いから「夜の勇者」なんていわれた。太さん（中西太氏）、山内（一弘）さんにはよく打たれたよ。

－67年西本幸雄監督のもと球団創設32年目で初のリーグ優勝。この年は18勝

米田　西本さんの力だった。自分から動いて教える厳しい人。特にバッティングはよく教えていた。

－67、68、69年と3連覇で第1次黄金期を築いた

米田　西本さんが監督に就任した年の高知キャンプで、おれと梶本さんが夜の街に誘われた。監督は酒を飲まないし、門限を過ぎても帰ろうとしない。

－どういう意味？

米田　今でも真意はわからんが、お前ら2人でチームを支えろという意味だったのかも…。

－「ヨネカジ」コンビがチームを支えた

米田　エースは相手のエースと投げ合って5割以上は勝たないといけない。今はエースといえる人材が少ないだろ。

－2年目からは19年連続2桁勝利、そのうち8シーズン20勝超え

米田　ピッチャーは先発完投なんだよ。抑えなんかエエとこどりやないか。今の球界はもっと先発を評価してあげてほしい。

－岩瀬氏に抜かれるまで最多試合登板記録を保持

米田　おれは（シーズン）300イニング、サイちゃんは400イニング投げた。時代が違う。1イニングでいいというなら、全試合、一年中投げてやる（笑い）。