阪神鳥谷に“引退勧告” 事実上の戦力外で退団へ

打撃練習中に厳しい表情を見せる阪神鳥谷(撮影・上山淳一)

阪神鳥谷敬内野手(38)が事実上の戦力外通告を受けたことが29日、球団関係者の話で明らかになった。

この日までに球団から“引退勧告”を受け、今季限りでの退団が決定的となった。生え抜きスターとして16年目を迎えた今季は出場機会が激減する中、本来の打棒を発揮できずにいる。他球団移籍の道を模索するのか、現役引退を選ぶのか。今後、背番号1の決断が注目される。 

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鳥谷が、今季限りで縦じまユニホームを脱ぐ。球団関係者の話を総合すると、この日までに球団から“引退勧告”を受けた模様。今後、球団が方針を変更するとは考えにくく、19年限りでの退団が決定的となった。

虎16年目を迎えた今季は出場機会が激減し、代打中心の出番が続く中、打率は2割8厘。25日の敵地ヤクルト戦後には「自分もこれが最後(の神宮)になるかもしれないので…」と意味深な発言を残し、その去就が注目されていた。

今季は5年契約の最終年だった。開幕前には「年齢的にも立場的にも、より強く進退を考えないといけないタイミングに来ている」と並々ならぬ決意でシーズンに臨んでいた。

昨秋から断酒を継続。24時間の大半をトレーニングと準備にささげてきた。ナイターゲームの日には午前中から計2時間近い走り込みを続け、体脂肪率は例年より4%近くも減って1ケタ台になっている。

ただ、今季は若手登用が加速しているチーム状況もあり、一気に出番を減らしていた。ここまで打点はゼロ。28日中日戦では1点を追う7回2死二、三塁で代打登場し、二ゴロに倒れていた。

球団は12球団屈指の練習量を誇り、後輩の手本にもなってきた姿勢を高く評価してきた。長年タイガースの顔としてナインを引っ張ってきた功績もたたえた上で、チームの若返りと底上げを重視し、生え抜きスターにも“引退勧告”をせざるを得なかったとみられる。

鳥谷は現状、今後の方向性について態度を明らかにしていない。2月の沖縄キャンプ中には「最後はやれるだけのことをやって、納得した形で白黒はっきりつけたい」と話していた。新たなチャレンジを目指す可能性も十分ある。他球団で現役続行の道を模索するのか、現役引退を選ぶのか。注目の決断はまだ先になりそうだ。

もちろん、これまでのスタイルを踏まえれば、残り23試合を全力で戦い抜くことに疑いの余地はない。チームは3位広島に3ゲーム差の4位。まだクライマックスシリーズ進出の可能性を十分残している。プロ16年で1度も経験していない悲願の日本一へ。縦じまの感触を日々かみしめながら、変わらず妥協なき準備を進めていく。

◆鳥谷敬(とりたに・たかし)1981年(昭56)6月26日、東京都東村山市生まれ。聖望学園3年夏に甲子園出場。早大では2年春にリーグ3冠王。03年ドラフト自由枠で阪神入団。04年9月9日から18年5月27日まで、プロ野球歴代2位の1939試合連続出場。10年の104打点は遊撃手で史上最多。11年最高出塁率。ベストナイン6度、ゴールデングラブ賞5度。13年WBC日本代表。今季推定年俸4億円。180センチ、79キロ。右投げ左打ち。