九工大の「95キロ右腕」沢が184球粘投も劇敗

九工大対日経大 9回裏1死満塁のピンチを抑え、雄叫びを上げる九工大・沢(撮影・浦田由紀夫)

<福岡6大学野球:日経大3-2九工大>◇7日◇第2週第1日◇福工大グラウンド

九工大の「95キロ右腕」、沢大地投手(3年=嘉穂)が粘投むなしくサヨナラ負けを喫した。

本来は外野手で、チーム事情により投手を始めて1年目の“ルーキー”。178センチ、95キロの「ぽっちゃり体形」が、延長10回を完投し14安打されながら3失点。184球を投げた。「いやあ、疲れました。多分、10回も投げたのは人生最多でしょう。昭和の投手みたいですね」。大学初勝利にあと1歩及ばなかったが、笑みを絶やさなかったマウンド同様、右肩をアイシングしながら、屈託のない笑みで振り返った。

2-2で迎えた9回に1死満塁のピンチを切り抜けると、小躍りして雄たけびを上げた。延長10回も再び1死満塁のピンチを迎えながら、ついにサヨナラ打を浴びた。「球速を測ったことがないので分かりませんが、直球の最速は多分120キロ台です」と笑う。それでも日経大打線を翻弄(ほんろう)したのは、急造投手とは思えない「工夫」のたまものだった。「直球をわざとスライダーと同じ速度で投げるようにしている。あとはチェンジアップで緩急をつけるようにしてます」。本格的に投手になって2シーズン目。相手のいやがる投球で凡打を築き、2回以降毎回走者を出しながら19残塁でしのいだ。延長10回のマウンドには口をもぐもぐさせながら上がった。「延長12回最後まで投げるつもりで、おにぎりをほおばったんですが、のみ込む時間がなくて…」と頭をかいた。

リーグでは最下位の「常連」。勝てば昨年秋季リーグ戦以来だった。「やっぱり勝ちたい」と勝利に飢えている。「外のスライダーを多く使うタイプなので、内角を突く球があれば勝てたかもしれない。これからはシュートを使えるようになりたい」。将来は「起業家になりたい」という貫禄たっぷりの右腕が、次節はこの日の184球を無駄にしない投球を目指す。【浦田由紀夫】