原監督絶賛「喝入れた」坂本勇人の気迫ヘッスラ生還

ヤクルト対巨人 1回表巨人無死二塁、二塁走者坂本勇は先発ブキャナンの暴投で一気に生還し、丸とタッチ(撮影・加藤諒)

<ヤクルト6-10巨人>◇7日◇神宮

頭からホームベースに突っ込んだ。自らの適時打で先制した直後の1回無死二塁、巨人坂本勇人内野手(30)は丸への初球、三塁側に転がった暴投のボールを捕手が見失ったのを逃さず、一気に生還した。「あれが一番、速いかなと思って」。泥んこでベンチに戻った主将が、6連敗中の重苦しかった空気を吹き飛ばした。

「主将の気迫」と映ったが、プロ2年目の08年からレギュラーを守る男に染み付く流儀を貫いただけだ。プレー中、いつも頭にあるのは「チームが勝てばいいです」。ヘッドスライディングを選択したのも、本塁への突入は足から滑るよりも速いからだった。

勝利を追い求めた末の結果を積み上げた。先制適時二塁打を放った1回無死二塁では「最低でも右に打てたら」と進塁打を念頭に、右翼線への二塁打。2点リードの3回1死からは最上級の結果となるリーグトップタイの35号ソロを放った。7回には丸の適時打で二塁から激走。足の状態が万全でなくても、勝利のためにリミッターを外した。

チームが勝つために、キャラ変も敢行した。シャイな一面を持ち、幼い頃から人前に出るタイプではなかったが、チームの苦境に主将5年目の責任感から、この日の練習中、元木コーチからの「モチベーション上げていけよー」のゲキに呼応。連敗中で重くなりがちのムードをあえて明るく振る舞うことで変えた。

勝利に向かって一本気な姿に、新人から坂本勇を知る原監督も心が動かされた。「チームにいい意味でカツを入れた」と絶賛。振り返れば、15年10月12日の阪神とのクライマックスシリーズでもヘッドスライディングで生還。その時の理由も「速いから」だった。2位DeNAとの差を3・5に拡大。主将の信念で6度足踏みした優勝への針が動き始めた。【久保賢吾】