広島堂林サヨナラ打 2軍で苦しむも愛娘生まれ力に

広島対中日 9回裏広島1死一、二塁、堂林(中央)は左越えサヨナラ適時打を放ちナインから祝福される(撮影・栗木一考)

<広島3-2中日>◇12日◇マツダスタジアム

広島が堂林翔太内野手(28)が同点の9回に左翼へサヨナラ打を放ち、チームを3カード連続勝ち越しに導いた。今季2度の2軍降格を味わうなど苦しいシーズンを送るが、途中出場で大きな仕事をやってのけた。7日に第三子を授かったばかりのパパが、グラウンドで結果を残した。チームは球団最多タイとなるシーズン11度目のサヨナラ勝利で2位DeNAにゲーム差なしとした。

   ◇   ◇   ◇

堂林が捉えたライナーが左翼福田の左を抜けると、打球の行方を見守った広島ファンが喜びを爆発させた。大歓声とともに鈴木が笑顔で生還。一塁ベースを回ったところで、ヒーローはチームメートからの手荒い祝福を満面の笑みで受け入れた。

「相手に向かっていく気持ち。それだけでいきました。感触は良かったんですけど、もしかしたら捕られるかなと思った。抜けて本当に良かったです」。

6日に再昇格して、スタメンは2試合のみ。この日も代打出場で、8回は空振り三振に倒れた。迎えた第2打席は同点の9回1死一、二塁。中日藤嶋の浮いたフォークをコンパクトに振り抜いた。「準備はずっとしていたので、いつでも行けるようにはしていた」。今季3本目の安打が値千金のサヨナラ打となった。

天使が力をくれたのかもしれない。先週7日に第三子となる次女が誕生。再昇格は予定日前日だった。もし2軍のままなら神戸遠征から、そのまま名古屋遠征。まだ愛娘と対面できていなかった。出産日に抱きかかえた愛娘に「やっぱりかわいい」と力をもらった。

今季は2度の2軍降格を味わい、2軍ではケガによる離脱もあった。「なかなかうまくいかないことが今年も多くて辛かったですけど、こういうことがあると思って頑張ってこられたと思います」。今年初のお立ち台で、優しいパパの表情は頼れる男のものに変わっていた。

広島は球団最多タイとなるシーズン11度目のサヨナラ勝利で3カード連続勝ち越し。2位DeNAとのゲーム差なしとした。緒方監督は「よく打ってくれたね。この声援にこうして応えてくれてね。こっちもうれしいし、本人もこの一打は大きい」と勝負強さを発揮したヒーローをたたえた。「もう全部勝つ気持ちでチーム一丸となって戦っていきたいと思います」。遅れて来た堂林が広島のラストスパートに火をつけた。【前原淳】