「車椅子ソフト大会」を支援する西武の思い/コラム

日本代表・大谷颯さんが所属する「群馬シャドウクレインズ」も大会に参加した

「第5回ライオンズカップ車椅子ソフトボール大会」が9月7、8日。大宮第二公園多目的広場で開催された。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、国内で障害者スポーツへの関心が高まっている中、西武ライオンズでは2015年に第1回大会をスタート。車椅子ソフトボールの大会としては、12球団初となる活動を続けている。車椅子ソフト選手・大谷颯さん(群馬シャドウクレインズ=24)の取材も兼ねて大会を取材した。

 

■12球団で唯一。2015年から大会を主催

 

「車椅子ソフトボール」と聞いて、興味はあっても生で見たことがある人は少ないのではないだろうか。簡単に説明すると、外野手4人を置く10人制のベースボール型車椅子スポーツ。ボールはソフトボールよりもやや大きい柔らかいボールを使用し、グローブは使わず、基本的に素手で捕球をして、ボールを「投げる」。金属バットで「打つ」、ベースを「走る」ことは野球と同じだ。試合は基本的に7イニング制。障害に応じて1(1点)から3(3点)までクラス分けがあり、合計21点以内の持ち点で出場選手を決める。日本では健常者も混ざって試合をするところが特徴的だ。

発祥地はアメリカ。約40年前から全米選手権が行われており、メジャーリーグのレッドソックスやカブスがサポートを行っているチームもあるそうだ。日本では2013年に(一社)日本車椅子ソフトボール協会(JWSA)が発足し、国内約20チームが活動をしている。ソフトボール元日本代表で銀メダリストの高山樹里さんが協会の会長を務めているそうだ。

まだまだ認知度の浅い車椅子ソフトを、西武は4年前からサポートしている。野球振興、こども支援、地域活性の3つの柱から成る「L-FRIENDS」活動の一環として、2015年に大会を立ち上げ、今回で5回目を迎えた。事業部・川原里美さんは「誰もが野球を楽しめる環境づくりをしていこうという球団の思いがあり、障害者スポーツを支援することは『野球振興』の一つであると考えています。4チームで始まった第1回から4年。今大会は最多の10チームが参加しました。認知度が広がったことは本当に喜ばしいことだと感じています」と大会の盛り上がりを語った。大会中は小学・中学生対象のジュニア大会や、一般参加できる体験会も行われ、誰もが車椅子ソフトを楽しめる工夫がなされていた。プロ野球の盛り上がりを目指すだけではなく、「ベースボール型スポーツの発展」という大きな視野を持って西武は大会運営を続けている。

 

■仮面少女・猪狩ともかさんが初安打

 

「ライオンズが協賛しているので華やかというか、参加人数や来場者が多くていいですね」と話すのは、日本代表選手で、今大会3年連続出場の大谷さんだ。大谷さんは今年8月、アメリカで行われた「ワールドシリーズINカンザスシティ」(参加18チーム)に出場し、初優勝を果たした。「車椅子ソフトは、野手がいないところに打ったり、打球を予測し守備位置を変えて守るところも面白いんです」と競技の魅力を語る。中学3年のときに発症した脊髄梗塞(こうそく)が原因で下半身が不自由になったが、小・中学時代に打ち込んだ野球を、車椅子を使って楽しんでいる。関わり方が変わっても、野球への愛情や、探求心は野球少年のころのままだ。

昨年から大会のスペシャルナビゲーターに就任したアイドルグループ・仮面女子の猪狩ともかさんもこの大会を盛り上げた。猪狩さんは大のライオンズファンで、昨年不慮の事故で両下肢麻痺となり車椅子生活を続けている。この日は「埼玉A・Sライオンズ」のメンバーとして代打出場し「初安打」を記録。チームメートと笑顔でハイタッチを交わした。

車椅子ソフトのように年齢や性別、障害に関係なく楽しめる「ユニバーサルスポーツ」の存在は、これからのスポーツ発展への大きなカギとなっていくだろう。2028年ロサンゼルス開催のパラリンピック正式種目を目指す中、大谷さんは「一人でも多くの人に知ってもらい、知名度を上げることが大切」と熱く語る。来月10月5、6日には東京臨海広域防災公園(有明)で、日本、アメリカ、ガーナの代表選手などが集う「中外製薬2019東京国際車椅子ソフトボール大会」が開催される。行楽の秋、まだ見たことないスポーツに触れる時間にしてみてはどうだろうか?【樫本ゆき】