菅野打ち鳥谷に男の意地 進退揺れるも虎戦士の執念

巨人対阪神 4回表阪神2死満塁、同点の右前適時打を放つ代打鳥谷(撮影・垰建太)

<巨人6-5阪神>◇15日◇東京ドーム

長年「虎の顔」を任されてきた男の意地を見た。今季限りでの退団を表明している阪神鳥谷敬内野手(38)が球界のエース、巨人菅野を打った。2点を追う4回2死満塁で代打登場。「積極的に行こうと思っていました」。2ボール1ストライクから内寄りに入ったカットボールを見逃さず一、二塁間を抜いた。一時は試合を振り出しに戻す2点打。「自分のバッティングができたのは良かった」と冷静に振り返った。

8月29日、球団から事実上の戦力外通告といえる“引退勧告”を受けた。同31日には今季限りでの退団を自ら明かした。虎ひと筋で16年目。今後他球団での現役続行を模索するにせよ、現役引退を選ぶにせよ、虎戦士として東京ドームで戦うのはこの2連戦が最後となるかもしれない。

「代打鳥谷」がコールされると、黄色が目立つ球場左半分だけでなく、オレンジ色に染まった右半分からも惜しみなく拍手が送られた。「満塁のチャンスだったので、あまりそこまで聞いている余裕はなかったですけど…。ありがたいです」。得点圏に走者を置いた場面では今季初の適時打。「伝統の一戦」で重圧を背負い続けた男のプライドがにじみ出た。【佐井陽介】