ガンちゃんは最後まで笑顔だった。広島が2日、岩本貴裕外野手（33）、飯田哲矢投手（28）、横山弘樹投手（27）、育成選手の木村聡司内野手（23）、岡林飛翔投手（20）の5選手と来季の契約を結ばないことを発表した。

地元広島出身で人気選手だった岩本は現役への未練は口にせず、笑顔でプロ11年を振り返った。憧れた広島球団、そしてファンに感謝し、現役生活に区切りをつけた。

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ファンに愛された、変わらない笑顔で現役への未練を吹き飛ばした。球団から戦力外通告を受けた岩本は、報道陣の問いかけに終始、笑顔で応えた。

「悔いはありません。暗い顔をしてもしょうがない。悔いなく、ここに来ている。まだやりたい、とかはない。今後はまだ分からない。家族と話をして決めていきたい」

地元広島商から亜大を経て、08年ドラフト1位で入団した。和製大砲への期待の大きさはマツダスタジアムのフェンスの高さを変えた。入団1年目に開場予定だった新球場の左翼ポール際のフェンスは当初7・8メートルに高くする計画だったが、左打ちながら左への長打を持ち味とした岩本の特長を生かすため、右翼と同じ3・6メートルとした。

期待に応えるように、ノーステップ打法にした10年に14本塁打を記録。だが、右膝を手術した11年以降は苦しみ、出場試合数を減らした。限られた打席数の中で、15年から3年連続打率3割をクリア。それでも1軍定着はならず、今年は1試合だけの出場に終わった。気持ちが折れそうな時もあったが、周囲の励ましで踏ん張った。「最後は一生懸命やろうと練習から取り組んだ。終盤は良くなってきた」。やるべきことはすべてやった。今はもう後悔はない。

同じ広島出身の金本氏が背負った背番号10を受け継いだが「あれだけの記録と記憶を残された方なので、いい結果を出せなかったので申し訳ない」と頭を下げた。それでも地元でプレーした11年は特別な時間だった。「最初の頃は（プレッシャーも）あったけど、『ガンちゃん』『ガンちゃん』と呼んでもらってうれしかった。気軽に声をかけてくれるファンがいることはありがたかった。広島で良かったなと思いました」。最後まで“ガンちゃんスマイル”を貫き、子どものころから憧れた赤いユニホームを脱ぐ。【前原淳】