里崎智也氏の野球教室 打撃の基本編

顔はセンターを向き、腰はしっかり回す。そして、フラフラしない

<週中ベースボール>

里崎智也氏(43=日刊スポーツ評論家)が、ジュニア世代の野球に独自のアドバイスを送った。9月29日、千葉・鴨川で野球教室を開催し、約50人の小学生に、丁寧に基本的な動きを指導した。ジュニア世代の野球で大事なことを問われると、開口一番「小学生から高望みをするな」。ひたすら基本を繰り返すことが肝要だと言う。里崎氏の指導方法を、2回に分けて掲載する。

「小学生は成長のスピードが全て。大きい子が、何でも圧倒するんです。大きい子を基準にしてはいけないんです」

全国で野球教室を行って感じるのは、体の大きい子がチームの中心にいること。早生まれだったり、早熟だったり、大きな選手が投げる球は速いし、打球は飛ぶ。周囲の指導者も、大きな選手に主軸やエースを託すことが多い。弊害がそこに潜むという。

「大きい子は、良いフォームでなくても投げるボールも速いし、手だけで打ってもヒットになる。そうなると、指導者も指摘しないし、本人もフォームを変える必要を感じないですよね。そのまま、良くない形を続けると、技術的に成長が少なく、かつて小さかった子に追い抜かれるんです」

自身の小学生時代は「背の順は、真ん中より後ろくらい」と、決して大柄ではなかった。「小学生の時は大きくない方がいいと思っています。大きい子は、周りより良い結果を出せるから、努力をしなくなる。だから、この世代は、正しい形を学ぶことが、大切なんです。『打った、抑えた』という結果を求めるのではなく、形です。活躍はうれしいけど、高望みは必要ないんです」

打撃練習では、選手に「バッティングで一番いい結果は何? ホームランでしょ? ホームランを打つには何が必要?」と問いかけた。選手たちは、口々にさまざまな答えを言う。すると「いっぱい言われてもできないでしょ? 今日は絶対できることだけやって帰ろう! 打球が早くなって強くなって、遠くに飛ぶやり方があるので、それを身につけて。超簡単だから!」と励ました。

指導したのは、下半身の使い方1点だった。右打者の前提で説明した。

まずは立ち姿。

「下半身をしっかり使うために、下半身に力が入っていないといけない。軸足の右足は、開いていたり、グラついていたら、力が入らないでしょ? 両足の親指にグッと力入れて、しっかり下半身を回す」

そしてスイング。

「打ち終わった後の右足はひねりすぎない。行っても90度まで。股もあそこがつぶれるくらいしっかり締める」

もっとも強調したのが腰の回転だ。

「右腰をいつもよりボール1個分多く回して! 巨人の坂本もよく打つじゃん。腰がメッチャ回っているのね。腰がしっかり回っていないと打球は飛ばないからね! 腰をいつもよりボール1個分回転させる。でもその時に、顔が一緒に回ったら、引っ張るだけになってしまう。顔は、センターに向いて、腰はしっかり回す。そして振った後にフラフラしない。以上、これだけ」

1人1人の腰を両手で押さえる親身な指導。勢いある打球が次々と飛んでいった。

◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。元プロ野球選手。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経てロッテ入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。