鳥谷は努力で向上、阪神は守備強化を/桧山進次郎

19年5月、ヤクルト戦でエラーする阪神糸原

<「猛虎再建論」第2回:桧山進次郎氏>

阪神が来季、15年ぶりの優勝を果たすための克服課題を日刊スポーツ評論家陣が「猛虎再建論」と題し、リレー形式で提言します。第2回は阪神一筋22年、4番や代打の神様で一時代を築いた桧山進次郎氏(50)です。秋季キャンプの強化ポイントは、両リーグワーストの102失策を犯した守備に尽きると明言です。【取材・構成=松井清員】

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ファンの方に一番喜んでもらえるのは、点を取って勝つ野球だと思います。でもこれだけ守りがおろそかになると、いくら投手力が良くても勝てません。大逆転でCSに進出して良い終わり方をしましたが、両リーグ最多の102失策以外にも、記録に残らないミスが多過ぎました。失策はつきもの、では済まないミスが多く、投手と野手の信頼関係が崩れた1年でした。

秋季キャンプの強化ポイントは守備に尽きます。打撃回りを含めた全体練習が午前10時から2時ぐらいまでとすれば、その後は日没まで内野手も外野手も特守です。今日は気分転換で、といった打撃練習は不要。泥まみれ、汗まみれになって何百球、何千球とボールを追いかけて欲しい。それも実戦を想定した球際に強くなる練習です。打撃に重点を置きたい気持ちも分かりますが、打撃練習はみんな好きだし1人でもできます。余力があれば夜間のマシン打撃や素振りも。でも守備はノックしてくれる人がいないと始まりません。

守備は練習するほどうまくなります。一番の好例が鳥谷です。04年の入団当初は正直、下手でした。遊撃には藤本がいましたが、岡田監督がミスに目をつぶって、将来の阪神を背負っていく人材と使い続けました。よく下柳さんにも怒られていましたよ。打たせて取る投手なので、ゴロ打球が多かった。センター前に抜けると「1歩目が遅いんや!」と。でも鳥谷も岡田監督の方針を理解していました。実力がないのに使ってもらっている、ではどうすればいいのかと、並々ならぬ努力をしていました。

守備は日に日にうまくなって、特に下柳さんの投げた試合でもよく打ちました。05年の最終戦で延長10回を投げての最多勝(15勝)をアシストしたのは鳥谷の2発、最後はサヨナラ弾でした。あれだけ怒っていた下柳さんが「トリ、ありがとう」と。これがプロだなと感じました。今は怒る投手もいなくなったので、野手の刺激が少ないかも知れません。でもエラーは一生懸命投げて打ち取った投手に迷惑をかけます。投手成績、給料にも関わります。仲間に迷惑をかけているんだと思えば、守備に対する姿勢も変わると思います。

うまくなりたいと強く思えば守備への興味も湧く。興味が湧くと打者を観察する。短く持ったな、引っ張ってくるな、いや押っつけてくるな、一塁走者が走りそうだなとかも感じられ、守備位置を変えたりできます。コーチから言われなくても先に動ける。ベンチからあっちだ、こっちだと大声で指示されるのとでは投手の安心感も大違いです。

もし失策が10~20個少なければ、メッセンジャーもあと2勝の日本100勝に到達できたかもしれません。何より、巨人にも決定的な強さがなかった今季は優勝争いに参戦でき、CSには苦しまずとも進出できたはずです。CSで負けた悔しさも刻み込み、鍛錬の秋にして欲しいと願います。

▼今季の阪神は両リーグ最多のチーム102失策を記録した。3桁に到達したのは、00年101失策以来19年ぶり。セ・リーグの守備位置別に見ると、バッテリーを含む内野では二塁を除き阪神の選手がワースト。大山の20失策は12球団最多となった。そんな中でも糸原は、二塁で124試合に出場しながら4失策と健闘を見せた。