0勝27敗 1勝したい小林大雅投手の最後の戦い

大学初勝利をかけ、最後の法大戦に挑む東大・小林大(撮影・古川真弥)

<東大野球部 100年の挑戦>

0か、1か。その差が、東大・小林大雅投手(4年=横浜翠嵐)には大きな違いを持つ。「1勝は本当にしたい。1勝を残せれば、一プレーヤーとして野球をやってきた意味を見いだせるかなと思います」。大学ラストカードとなる26日からの法大戦を前に、静かに闘志を燃やした。

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49試合、0勝27敗、防御率5・80。1年秋から東京6大学リーグで投げ続ける左腕の通算成績が語るものとは? 柳田主務は「27敗は、むしろ勲章」とたたえる。チームは17年秋から40連敗中。既に44季連続最下位が決まった。勝てなくても変わらず練習し、投げ続けてきた。ひたむきな姿を、みんな見ている。浜田監督は「小林に勝ちをつけて卒業させたい」と、全員の願いを訴えた。

当の本人は「27敗」を「名誉な数字ではありません」と即答した。ただ、込められた思いは理解している。「惜しくも負けた試合もあれば、最初からぶっ壊した試合もある。形はどうあれ、負けを積み重ねてきました。それでも信じて使ってくれた首脳陣には感謝してます。だから、最後に1勝して終わりたい」。

なぜ、勝てなくても野球を続けられたのか。「最後まで勝つ瞬間を信じてやってきました。高校の仲間。家族。ずっと応援してもらってます。いい報告をしたいし、勝ちを届けたい。簡単に諦めるわけにはいかなかった」と打ち明けた。

高3の夏。初戦で、勝てると踏んだ学校に1点差で敗れた。中学でバッテリーを組んだ元相棒に打たれた。悔いだけが残った。もう1度、応援を受けながら、高いレベルの相手に勝ちたい。「最後の夏に勝ち進んでいたら、野球を続けていたか。負けたあの試合が、次の4年間をつくりました」。東大野球部に行く。野球人生の指針ができた。

平たんではなかった。1年秋のデビューが慢心を生んだ。2年は登板機会が減少。その秋の法大戦でチームが挙げた勝利と勝ち点に関われなかった。「自分の投球が勝ちにつながったという感覚が欲しい。勝ちは、喜びの桁が違う。みんなで分かち合いたい。だから1勝したい」。それが、小林大が求める「野球をやってきた意味」だ。

法大にはドラフト指名された選手もいる。片や、小林大は大学で野球をやめる。この先、両者が相まみえることは、もうない。だが、今は同じグラウンドに立っている。人生最後の真剣勝負へ。【古川真弥】

 

東大・小林大雅の成績(24日現在)

16年春 登板なし

16年秋 6試合0勝3敗、25回、防御率6・48

17年春 6試合0勝3敗、11回1/3、防御率11・12

17年秋 4試合0勝1敗、9回2/3、防御率8・38

18年春 10試合0勝7敗、41回、防御率3・73

18年秋 9試合0勝5敗、43回2/3、防御率5・56

19年春 7試合0勝4敗、28回、防御率9・00

19年秋 7試合0勝4敗、46回1/3、防御率3・69

通算 49試合0勝27敗、205回、防御率5・80