“アジアのドン”が語る五輪種目「野球」復活のカギ

寺尾編集委員のインタビューに答えるWBSC副会長、アジア野球連盟会長のトム・ポン氏(左)

<寺尾で候>

日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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日本が優勝した「プレミア12」が開催されていた11月、日本政府から「令和元年秋の叙勲」が発表された。そのなかで今大会を統括した世界野球ソフトボール連盟(WBSC)副会長彭誠浩(ホウ・セイコウ)氏(75)が「旭日小授賞」を叙勲された。

台湾生まれで、プロ・アマ含めて日本球界につながりが深く、英語名「Tom C・H・Peng」から、通称ポンさんと呼ばれている。アジア野球連盟会長で“アジアのドン”として知る人ぞ知る人物だ。

「日本野球とは約40年付き合ってきました。王(貞治)さんとは38年もの友人、山本英一郎さん(故人=元日本野球連盟会長)とも友情を深めた仲です」

日本から外国人の野球関係者に対する叙勲は珍しい。84年ロサンゼルスオリンピック(五輪)で野球が公開競技にこぎつけるのに尽力した五輪米国代表監督のロッド・デドー氏(故人)、米大ドジャースオーナーだったピーター・オマリー氏らがいる

今回の叙勲について外務省は「野球を通じた日本・台湾間の交流促進及び友好親善に寄与した」と説明した。長年にわたり高校、大学、社会人の日台交流に貢献。20年五輪の東京開催は、中南米諸国のIOC関係者に対する独自の人脈を生かしたロビー活動が多大な影響を及ぼしたといわれる。

24年パリ五輪では、競技種目から野球ソフトボール除外が決まっている。ポンさんは「非常に残念だ。欧州の野球人気が低いことが大きい。でも28年ロサンゼルス五輪では再び採用されるはずだ」と期待を込める。

そこで五輪復活のキーにポンさんが挙げたのは『中国』という意外な国だった。「中国では今盛んに野球の大会が開かれている。確かに発展途上だが、非常にポテンシャルが高く、中国のパワーは大きい」とプラス効果を得るとみている。

10月に社会人が参加した第29回BFAアジア選手権(台中)では、オープニングラウンドに続き、中国が3位決定戦で韓国を下している。ポンさんは「中国はメダルをとったことでガバメント(政府・政治)が動く可能性がある。これはニュースだよ」と言った。

気まぐれなIOCを振り向かせるためにも、プロ・アマ問わず野球界は全力を尽くすべきだ。