ロッテ東妻 まずは何でもやってみよう/プロに聞く

ケガをしない体を作るのが一番とアドバイスしてくれた東妻

<週中ベースボール>

先生になったつもりで授業をします。「プロに聞く」の第3回はロッテのルーキー東妻勇輔投手(23)。日体大時代に教職を取った右腕。172センチと決して大きくはない体から、最速155キロを投げる中継ぎだ。自身の経験と教育実習で学んだことを合わせ、未来のプロ野球選手にアドバイスを送る。

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何でもやってみることが大切だと思います。僕は中学生の頃は、いろいろなスポーツを真剣にやりました。友達と遊ぶ時もそうですけど、野球1つに固執することなく、水泳、バスケ、サッカーなど。やっていると、たまにコツが見えることがあるんですよ。

例えばバスケだとドリブルだったり、シュートだったりに、何か絶対コツがあるんです。やってるうちに「あっ!」と気づく瞬間があって、そのコツはどのスポーツにも共通していると思うんです。しかも、それが野球につながるんじゃないかと。

僕はずっと水泳をやっていたのですが、水泳は一番、野球につながったのではないかなと思っています。肩が強くて肩甲骨周りが柔らかいのは、水泳をやっていたからだと思うんです。僕は身長が172センチで、プロ野球選手の中では決して大きくありません。それでも150キロ以上のボールが投げられるのは、そういうことが生きているのではないかと。だから、他のスポーツをやった方がいいと思うんです。

中学校の頃の陸上も、その1つです。僕は和歌山興紀ボーイズというクラブチームに所属していたので、学校の部活では野球をやっていませんでした。ですが、長距離も走れて、足もそこそこ早かったので、陸上部の顧問の先生から助っ人に呼ばれたりもしました。オリックスの山本由伸投手が取り入れている、やり投げみたいな練習があります。ジャベリックスローというのですが、僕は中学の時からやってたんですよ。陸上の顧問から「お前肩強いだろ?」と言われて。

いざやってみると、飛ばすのが難しかった。野球投げをすると、ぶれてすぐ落ちちゃいますし、力み過ぎてもいけない。そういうところでも、腕の回し方とか、使い方とか、すごく勉強になりました。どこで力めば一番飛ぶのかということも、野球につながっています。ほら、やはり何か見つかるんですよね。

大学の時は先生になるための授業で、サッカーとかバスケとかも単位を取らないといけなかったんです。今までとは違い、真剣に教えられながらやることによって、また新しいことが見えてきました。大人になってからもそうだったことを考えれば、子どもの頃にやっておけば、なおさら世界は広がると思います。

野球に限らず、小中学生に言いたいことは「いろんなスポーツをやって、どうやればうまくなるのか。どうやればこういう動きができるのか」など、頭で考えるんじゃなくて体で覚えるということ。これが運動神経がよくなるコツだと思います。スポーツ全般、やって損をすることはないんです。

ここからは教育実習に行って分かった話です。以前は「体育の授業をやるにあたり、どの子も楽しく、うまくやれるようにしてあげたい」と思っていました。でも絶対やりたくない子、やれない子もいる。その子に無理やり強要するのは違いますし、何なら先生になって一番気をつけないといけないのはケガだと気づいたんです。特に小さい子だと、ボールを持たせた時に、どこに投げるかわからない。指導者になったら、ケガをさせないことを一番に考えようと思いましたね。

僕も小さいころから根性論で、努力はむちゃくちゃした方だと思います。努力したから今があるとも思います。だけど、ケガに泣いた時期も長かったんで、ケガしない体を作るのが一番だと今になって思います。「うまくならないと、面白くない」というのは分かるけど、ケガで何もできないことが一番つまらない。いろいろ経験を積んでほしいですけど、やり過ぎには注意ということですね。ペースは人それぞれなので、自分に合ったペースでやってほしいです。矛盾しているようですが、焦らず経験を積むことが大切だと思います。

◆東妻勇輔(あづま・ゆうすけ)1996年(平8)4月4日、和歌山市生まれ。智弁和歌山で14年センバツ出場。日体大では17年秋のリーグ戦でノーヒットノーランを達成。18年ドラフト2位でロッテ入団。今年7月に1軍デビューし、8月1日オリックス戦でプロ初勝利。今季推定年俸1200万円。弟の純平は今年のドラフトでDeNAから4位指名。172センチ、80キロ。右投げ右打ち。