ソフトバンク周東、盗塁で必要不可欠な5つの極意

9月19日、一塁でリードを始める周東

<潜入:盗塁編>

走塁のコツ教えます-。今季「快足」でソフトバンクの日本一、プレミア12での侍ジャパン世界一に貢献した周東佑京内野手(23)の盗塁と走塁に「潜入」し、その極意を2回にわたって紹介します。前編は盗塁編。スタートや走法など盗塁に必要なものは何か? 育成入団2年目の今季開幕直前に支配下契約になった走りのプロの「考える足」に迫ります。【取材・構成=浦田由紀夫】

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周東は盗塁してほしい時にしっかり決める。リーグ戦の企図数は30で成功25、失敗5。盗塁成功率は8割3分3厘だった。注目すべきは25盗塁のうち15盗塁は代走から。相手が警戒する中でスタートを切って成功する。その極意は何か。ポイントに分けて紹介する。

(1)スタートは投手だけを見ない 二盗は投手もけん制で刺そうと必死。その中でどうすれば最高のスタートを切れるのか。

周東 投手のどこを見てスタートを切るのか。よく足だと言われます。でも足だけを意識しすぎて体が固まってしまうのはダメ。ボクは全体をぼやっと見ます。投手だけでなく投手のバックになっているスタンドの観客なども一緒に見る。景色として見るのに慣れると、投手が少しでも動くのが分かってくる。ホームに投げる時は、クセとして足を動かす前に必ずどこかが動くもんなんです。それをベンチにいるときから見て把握しておく。足が動いてからでは遅い。足が動く前兆の動きでスタートを切るんです。

(2)塁間は一直線に走り切る 約27・40メートルの塁間をいかに速く走るのか。

周東 一塁ベースと二塁ベースの外側を結んだ線上を一直線に走るイメージです。そのために二塁ベースの右端目がけて走りきります。

(3)スタートを切って3歩目でトップスピードに乗せる 50メートル走5秒7は、時速約32キロ。その足をどう生かすのか。

周東 スタートして左足、右足と踏み込んで3歩目の左足を踏み込む時にトップスピードになるようにしています。普段のウオーミングアップとかでダッシュ練習をする時に、これを意識しています。

(4)目線は変えない 単独盗塁でも投球結果がどうなったか、走りながら打者方向を見る走者は多い。しかし、周東は逆だ。

周東 投球がどうなったかはあまり見ません。その情報は遊撃手の動きで判断します。見送ったのか、打ったのか、どこに打ったのか。二塁へ走っている時に視線に入る遊撃手がどう動くかで判断できます。盗塁は0・01秒でアウト、セーフが分かれますので。

(5)スライディングは足 ヘッドスライディングはスピードを殺すというのが周東のこだわりでもある。

周東 ベースには頭からは行かないです。絶対にスピードが落ちます。二盗ならベース右端に、左右どちらか合う方の足を突き刺すイメージです。

三盗もコツとしてはスタート、走り方など大きく変わらない。周東なりの極意もあるが、これはさすがに企業秘密だという。ただ走るだけではない。普段の練習から意識して考えることで、盗塁は大きく成功に近づく。(つづく)

◆今季の周東の盗塁 102試合に出場し、30回試みて25盗塁だった。先発した23試合で9盗塁。5月3日から4試合連続で決め、3日楽天戦と5日オリックス戦はともに2盗塁をマーク。1試合2盗塁は3度あり、そのうち2度は二盗、三盗と立て続けに決めた。代走では47試合で15盗塁。守備からの出場でも1盗塁を決めている。5回の失敗の内訳は、1回が走者一、三塁で三走として重盗を試みて本塁でアウト。その他4回はいずれも二盗を試みて失敗した(一、二塁間に挟まれてのアウト1回を含む)。なお打率は1割9分6厘だった。来季は内野での先発争いが目標で「100安打打てば50盗塁のチャンスはある」と意気込む。

◆周東佑京(しゅうとう・うきょう)1996年(平8)2月10日、群馬県生まれ。東農大二3年夏の県大会では高橋光成(現西武)擁する前橋育英に敗れ準優勝。東農大北海道オホーツクでは14年明治神宮大会、15~17年全日本大学選手権出場。17年育成ドラフト2位でソフトバンク入団。18年は27盗塁でウエスタン・リーグ盗塁王。今年3月に支配下選手登録。今季は102試合に出場し23試合に先発、代走を中心に25盗塁をマークした。179センチ、67キロ。右投げ左打ち。